2014年2月23日日曜日

西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「終物語 (上)」


西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト)「終物語 (上)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062838575/>
単行本(ソフトカバー): 396ページ
出版社: 講談社 (2013/10/22)
言語: 日本語, 日本語
ISBN-10: 4062838575
ISBN-13: 978-4062838573
発売日: 2013/10/22

[書評] ★★★☆☆

西尾維新氏による「〈物語〉シリーズ」15冊目。

高校3年生・阿良々木暦の通う学校に、突然転校してきた謎の1年生・忍野扇。そこで起きる怪異現象に対して、扇が不思議な働き(活躍)を見せる。

内容は3本のショートストーリー(とはいっても夫々文庫本1冊くらいの分量にはなる)。このうち最初の2本は、謎が解かれる過程で、人の心の闇・醜いものを見せつけられ、正直、読後感は良くない。読み終わった時に「嫌な疲れがどっと出る感じ」。それでも次へと読み進めてしまうのだから、このシリーズは不思議だ。3本目も幸福な形では解決しないのだが、少しだけ救いのある終わり方と言えるかも知れない。

で、今回の語り部は、シリーズの主人公・暦クンなのだが、今まで彼が語り部をした時と違い、(ともすれば読み難い程の)言葉遊びや色モノ要素が極めて少ない(ゼロではないが)。他の登場人物との絡みもあるのだろうが、暦クンの語りとしては極めてシリアス。内容が内容なだけに、陰惨な小説とも言える。読むだけで精神力を吸い取られるという、不思議な本だ。

こういう本が売れる今の日本って、時代が病んでいるのかも知れない(勿論、ついつい読んでしまう私も病んでいる可能性を否定できない)。作者の西尾氏にはちょっと申し訳ないのだが、万人には薦められない本だ。シリーズを読んでいて途中途中で出てきた謎解きをしたい人にだけ、オススメ。中毒患者の方々は、私なんかがオススメしなくても、もう読んでいるでしょうけど。

2014年2月20日木曜日

西原 理恵子 (著)「スナックさいばら おんなのけものみち」シリーズ (3冊)

本シリーズの構成は、角川書店のサイバラ女史のサイトで募集したメッセージ・エピソードをもとに展開している。その時その時の「お題」に従って投稿された内容にサイバラ女史がコメントする形。投稿された悩み・愚痴について、切り口を変えて返答する手法は、「生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント」(Amazon.co.jp拙書評)と同じ。筆者の名前・話題性を使ってネタを集めるという方法は、ちょっと手抜きじゃねーか? みたいな感もあり(笑)。

でも、シリアスな話題もシリアスに扱い過ぎず(そういう辺りに細かな気の遣い方が見える…のはサイバラさんの文才?なんだろうなぁ)、気を張らずに読める本として良いかも。

・  ・  ・  ・  ・  ・  ・


西原 理恵子 (著)「スナックさいばら おんなのけものみち 七転び八転び篇」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4041103762/>
単行本: 282ページ
出版社: 角川書店(角川グループパブリッシング) (2013/1/29)
言語: 日本語
ISBN-10: 4041103762
ISBN-13: 978-4041103760
発売日: 2013/1/29

[書評] ★★★☆☆

サイバラ女史のブログからできた本、第1弾。内容は、
  • 男運
  • 夫婦生活
  • 出産・子育て
  • 肥満
といったテーマに関する、ぶっちゃけ話。色々と抱えている女性にとって、デトックス効果がありそう。

・  ・  ・  ・  ・  ・  ・


西原 理恵子 (著)「スナックさいばら おんなのけものみち バックレ人生大炎上篇」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4041104378/>

単行本: 324ページ
出版社: 角川書店 (2013/5/1)
言語: 日本語
ISBN-10: 4041104378
ISBN-13: 978-4041104378
発売日: 2013/5/1

[書評] ★★★★☆

シリーズ第2弾。今回は、
  • 独り身でいること
  • 仕事
  • 友達
等が話題。投稿者の愚痴に対してサイバラ女史がコメントをする。日本人共通の特性として「真面目すぎる」ことを挙げ、少し肩の力を抜いても良いんじゃないかとアドバイスをくれる。

・  ・  ・  ・  ・  ・  ・


西原 理恵子 (著)「スナックさいばら おんなのけものみち ガチ激闘篇」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4041105099/>

単行本: 333ページ
出版社: 角川書店 (2013/7/31)
言語: 日本語
ISBN-10: 4041105099
ISBN-13: 978-4041105092
発売日: 2013/7/31

[書評] ★★★★☆

本書のテーマは
  • 嫁姑問題
  • 介護
  • 離婚
など。「第4章 冷蔵庫の残りもの上等! 我が家のサイテー料理選手権」は(自分にも覚えがあるので)笑いながら読めたが、それ以外はシビアな話が多い。1人で何でも抱えて頑張ってしまう「美談のような状況」は、関係する人たち全員の「幸せ」ではないとバッサリ書いている。本当にその通りだと思う。

・  ・  ・  ・  ・  ・  ・

他人の悩み・愚痴を共有してお互い喋り合うのと、サイバラ女史の「頑張ったね!」「よく耐えました!」というコメントだけでも、近い境遇にある人はデトックス効果があると思う。

高須克弥さん(高須クリニック)との熱愛?報道を逆手にとって“売り”にしてしまったり、サイバラ女史の逞しい生き方を見るだけでも、ガス抜きはできるかも。内容には全面的に賛成できるわけではないが、生活にストレスを抱えた女性にとって、参考になる話、「デトックス」効果も多いかも。

2014年2月17日月曜日

司馬 遼太郎 (著)「功名が辻」文庫版〈1〉~〈4〉

またまた歴史小説です。

司馬 遼太郎 (著)「功名が辻〈1〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4167663155/>
文庫: 313ページ、出版社: 文藝春秋; 新装版版 (2005/02)、ISBN-10: 4167663155、ISBN-13: 978-4167663155

司馬 遼太郎 (著)「功名が辻〈2〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4167663163/>
文庫: 347ページ、出版社: 文藝春秋; 新装版版 (2005/02)、ISBN-10: 4167663163、ISBN-13: 978-4167663162

司馬 遼太郎 (著)「功名が辻〈3〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4167663171/>
文庫: 336ページ、出版社: 文藝春秋; 新装版版 (2005/03)、ISBN-10: 4167663171、ISBN-13: 978-4167663179

司馬 遼太郎 (著)「功名が辻〈4〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/416766318X/>
文庫: 327ページ、出版社: 文藝春秋; 新装版版 (2005/03)、ISBN-10: 416766318X、ISBN-13: 978-4167663186

[書評] ★★★☆☆

戦国時代~江戸初期の武将、山内一豊の妻・千代を主人公とした戦国武将物語。 一国の大名となるには凡庸とも言える武将・一豊の妻として、 千代は一豊をおだてたり、(家臣を経由して)助言をしたりして、 陰ながら一豊の立身出世を助ける。 一豊は織田信長の臣下としてキャリアをスタートするが、 千代の働きの功もあり、信長~秀吉~家康の時代の流れに上手く乗り、 とうとう土佐一国の主にまで登りつめる。

まだ駆け出しの頃の一豊に関する資料など少ないであろうし、 史実に矛盾しない程度の創作は多々あるのだろうが、 武将をその妻・千代の目を通じて描写した作りは面白い。 司馬遼太郎らしい書き込み方と言えよう。

なお、一豊の家系の山内容堂は、幕末時代の土佐藩主であり、 坂本龍馬を輩出した国の国主である(坂本龍馬は脱藩後に活躍をするのであるが)。 戦国~江戸初期の登場人物の多くの家系から幕末時代の人物が多く輩出されている。 司馬遼太郎は作中にて「余談」としつつも、こういうつながりを示していることが多く、 歴史の流れを感じながら読むという楽しみ方もある。

幕末時代~明治・大正・昭和初期までの歴史小説は若い人向けと言えるだろうが、 本作品はもう少し大人になってから読むと十分に味わえる内容なのではないかと思う。

2014年2月12日水曜日

隆 慶一郎 (著)「死ぬことと見つけたり」(上・下)

今回もまた文学作品です。

隆 慶一郎 (著)「死ぬことと見つけたり〈上〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101174180/>

文庫: 341ページ; 出版社: 新潮社 (1994/08); ISBN-10: 4101174180; ISBN-13: 978-4101174181; 発売日: 1994/08

隆 慶一郎 (著)「死ぬことと見つけたり〈下〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101174199/>

文庫: 343ページ; 出版社: 新潮社 (1994/08); ISBN-10: 4101174199; ISBN-13: 978-4101174198; 発売日: 1994/08

[書評] ★★★★☆

江戸時代初期の、勇猛で知られる、佐賀武士(葉隠)の生活模様と人間ドラマを描く。 徳川の天下平定からまだ時代も浅く、天草四郎の乱などがドラマの舞台。 「死ぬことと見つけたり」とは、佐賀武士の生活を指す。 毎朝、自分が死ぬ所を想像し、己の死に際の精神を鍛え、毎日が始まる。 この辺り、坂本龍馬が若かりし頃、頭の上の突然岩が降って来るのをいつも想像し、 いつ死んでも良いようにと精神の鍛錬を行った、との言い伝え(司馬遼太郎「竜馬がゆく」より)とも通ずるところがある。

にしても。歴史小説というと司馬遼太郎が有名だが、 司馬翁が精緻な描写をしていたのとは対照的に、 隆翁は流れるような描写が特徴。 本書を開いて、わずか数ページでぐいぐいと読者を引き込む力を持っている。 迫力のある筆致で、非常に読み応えのある本だ。 面白い。

本書は、隆翁が亡くなる直前の執筆で、未完のまま終っている。 巻末に、その後のストーリーのスケッチが示してある。 まさに、自分の生命の尽きる直前まで、気力の限り、執筆に勤しんでいたことが伝わる。 迫力があるわけだ。

(葉隠武士のような生き方が現代の日本という時代に合わないのは重々承知だが) 男の生き様を表す小説として、日本男児ならば一度は読んでおきたい。

2014年2月9日日曜日

司馬 遼太郎 (著)「城をとる話」

久しぶりの文学作品です(笑)。


司馬 遼太郎 (著)「城をとる話」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4334733999/>

文庫: 411 p ; 出版社: 光文社 ; ISBN: 4334733999 ; (2002/11/12)

[書評] ★★☆☆☆

久々に読んだ司馬遼太郎作品。 「城の主になりたい」と思った一介の浪人が、乱世の時代、仕官することで権力を得、 民の心を掴むことで力を得、半ばゲリラ的に城の主となる話である。 存在したか否かも不明な人物を描くことで、作者の創作が光る。

城をとるまでの前段階は非常に緻密で、人生を一段一段積み上げていく展開に爽やかさ・好感が持てる。 これぞ男の生き方だ、と。 しかし、最後の段の主人公はかなり破滅的。 自分に協力してくれた人たちを巻き込み、ひたすら破滅へとひた走る。 読後には無常観、全てが無に帰した感覚だけが残る。 司馬作品にこのテの感覚は多いのだが、本作は特に読後感があまり宜しくない。

2014年2月8日土曜日

長谷川 曉司 (著)「御社の特許戦略がダメな理由」


長谷川 曉司 (著)「御社の特許戦略がダメな理由」
<http://www.amazon.co.jp/dp/480613659X/>

単行本: 317ページ
出版社: 中経出版 (2010/3/24)
言語: 日本語
ISBN-10: 480613659X
ISBN-13: 978-4806136590
発売日: 2010/3/24

[書評] ★★★★★

筆者は、元・三菱化学株式会社理事、知的財産部長。自身の経験を通じて得た、特許を利益に結び付ける方法を述べる。よく言われる「三位一体の特許戦略」の実践的な解説書。

実例は化学メーカのものが多いので、人によっては理解しにくい箇所もあるかも知れないが、少なくとも私の場合、「特許戦略」に関するモヤモヤを大きく解消して貰えた。特に後半の
  • ノウハウとするか特許とするか
  • 自社製品の用途まで権利化するかどうか(特にB to Bの業態で多く問題となる)
についての例だけでも読む価値があると思う。

知的財産部門所属の人は勿論、研究開発部門所属の人(発明者)にも是非読んでもらいたい良書だ。

2014年2月1日土曜日

ミチオ カク (著), 斉藤 隆央 (翻訳)「サイエンス・インポッシブル―SF世界は実現可能か」


ミチオ カク (著), 斉藤 隆央 (翻訳)「サイエンス・インポッシブル―SF世界は実現可能か」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4140813245/>

単行本: 461ページ
出版社: 日本放送出版協会 (2008/10/25)
言語: 日本語
ISBN-10: 4140813245
ISBN-13: 978-4140813249
発売日: 2008/10/25

[書評] ★★★★★

「スタートレック」、「透明人間」、「ハリー・ポッター」といったSFやファンタジーに出てくる、“ありえない”テクノロジーの可否と、実現の時期を予言する本。ニューヨーク市立大学の理論物理学教授が、各テーマについて真面目に考察し、「こういう形でなら実現できる!」を示す。とても面白い。

こなれた翻訳も良いのだろうが、何よりミチオ・カク氏の「読ませる」書き方が非常に優れている。理系的な内容の本で、寝るのも忘れて没頭した本は、久しぶりだ。テクノロジーの将来について、「ワクワク」「ドキドキ」が詰まっている。

理系を目指す高校生や(高校生には少し難しいかも知れないが)、大学1~2年生位の「科学者のタマゴ」の人たちに多く読んで欲しい本だ。良書。