2016年6月26日日曜日

日向涼子「〈坂バカ〉式 知識ゼロからのロードバイク入門」


日向涼子「〈坂バカ式 知識ゼロからのロードバイク入門」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4797384743/>
新書: 208ページ
出版社: SBクリエイティブ (2016/5/7)
言語: 日本語
ISBN-10: 4797384743
ISBN-13: 978-4797384741
発売日: 2016/5/7

[書評] ★★★★★

誰このキレー系女子サイクリストは?! ←表紙を見た時に最初に思った感想(笑)。筆者の本業はモデルさんだそうです。数年前に自転車(スポーツバイク)にハマり、近年はヒルクライム・レースで入賞したり、自転車界でも活躍するようになったようです。

さて、本書。最初は自転車と言えばママチャリ以外思いつかなかった女性が、ふとしたキッカケでスポーツバイクに乗るようになり、気がつけば以前は全く興味のなかったロードバイクに乗るようになり、いつの間にかヒルクライム・レースのイベントに出るのが楽しくなってしまった(海外のイベントにも行くようになった!)…という、自転車界のシンデレラ・ストーリー(?)みたいな話。ここまでで前半。

後半は、科学的トレーニングのイントロみたいな話と(ヒルクライムに特化しているけど、専門書よりずっとわかりやすい/笑)、日焼け対策等、男女問わず役立つ内容が多い。

サイクリストにとって「あるある」な話も多いし、感情移入できる内容が多いのも良い(過負荷トレーニングは体力がピークの時にやりたいけど、そうすると次までそのピーク値が標準値になるので逆にツライとかね)。あと、男性サイクリストに対して、女性サイクリストに対して気を使って欲しいポイントが書かれていたりするのも良い(女性に限らず体力差のある仲間に対して気遣うべきポイントとして読んでも良し)自転車仲間を増やしたい人の参考書として、最近の本の中では最強だと思う。内容もさわやか系+癒し系で適度にユルく、読後感も爽やか。所々に書かれたヘタウマなイラストも可愛いですよ。

過度にストイックでもなく、過度にマニアックでもない。こういう本も良いですね(筆者の日向女史はおそらくかなりストイックかつかなりマニアだとお見受け致しましたけどね/笑)。サイクリスト仲間を増やしたいそこのアナタ、布教グッズ(笑)としてもオススメですよ!!

2016年6月19日日曜日

池上彰「知らないと恥をかく世界の大問題 (7) Gゼロ時代の新しい帝国主義」


池上彰「知らないと恥をかく世界の大問題 (7) Gゼロ時代の新しい帝国主義」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4040820630/>
新書: 287ページ
出版社: KADOKAWA/角川書店 (2016/5/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4040820630
ISBN-13: 978-4040820637
発売日: 2016/5/10

[書評] ★★★★☆

『知らないと恥をかく世界の大問題』シリーズ最新刊。
  • 参考:前著…「(6) 21世紀の曲がり角。世界はどこへ向かうのか?」(Amazon拙書評)
タイトルの「Gゼロ」とは、世界をリードするのは「G7・G8」でも「G20」でもなく、リードできる国家が存在しなくなっている現状を言う。内容は、以下のようなホットな話題で、わかりやすい解説。
  • 自称「イスラム国」は今後どうなるか
  • 旧帝国復活の動き…オスマン帝国、ペルシャ帝国、帝政ロシア、明王朝復活への動きか?
  • 地球温暖化対策
  • 安倍政権の安保法
  • 沖縄の基地問題
本書では、第一次世界大戦にまで遡って考えると、世界の現状と今後の動きを理解し易いと言う。確かにその通りであるが、池上氏が他の本で書いたのと内容がかなりカブっているので(そういう内容の箇所は斜め読みはし易いが/笑)、色々読んでいる人にとって必読というほどではないかも。

本書のポイント(まだ私が他で読んでいなかった内容)を絞ると、ズバリ以下の2点。
  • 極右vs極左の様相を見せている米国大統領選の背景(米国建国にまで遡らないと理解しにくい)
  • EU域内でヒト・モノ・カネの流動性が増していることが、移民政策やテロ対策を難しくしていること(「ベルギーやフランスは過去の植民地政策の報復を受けている」)
また、巻末での「歴史はただの暗記モノではなく、因果関係の蓄積が歴史。その因果関係を調べることは面白く、本当は歴史は面白い」という趣旨と、「世の中の最新の動きをニュースで確認しながら、時には歴史の本を読み返して、長い時間軸の中でニュースの意味を考えてみてください。(中略)自分の頭で因果関係をたどる作業を積み重ねる。そこから将来を考えるヒントが見えてくる」という記述は、ジャーナリストとして長年世界のニュースに触れてきた人ならではの重みがある。

新書サイズで比較的短い時間(電車移動中など)で読める分量なので、手軽に日本と世界の「現在(いま)」を概観するにはナカナカ良いかも知れない。お薦め。

2016年6月12日日曜日

半藤一利・佐藤優「21世紀の戦争論 昭和史から考える」


半藤一利・佐藤優「21世紀の戦争論 昭和史から考える」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4166610724/>
単行本: 284ページ
出版社: 文藝春秋 (2016/5/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4166610724
ISBN-13: 978-4166610723
発売日: 2016/5/20

[書評] ★★★★★

昭和史の大御所・半藤一利氏と、元外交官(ロシア担当)・佐藤優氏の対談。本書の題名は「21世紀の戦争論」となっているが、内容は戦前日本の総括(第3次世界大戦の可能性についても軽く触れられているが、メインテーマは戦前日本から何を学ぶべきかという内容)

毒ガスや人体実験といった非人道的な兵器開発という日本にとって後ろ暗い歴史。スターリンが提案したが、トルーマン米大統領の猛反発に遭い実現しなかった「日本分割統治」。長州閥の重鎮・山県有朋亡き後、薩長閥を除くメンバーで構成された一夕会(いっせきかい)が作った昭和という歴史。責任の所在が不明な官僚の体質や、自分に都合の良い情報だけを拾い集めて(都合の悪い情報は無かったことにしたり、重要だが悪い情報を報告した個人を罰したりして)問題を大きくしてしまうなど、現代日本にも色濃く残る問題点(古い日本企業などにも当てはまる体質だろう)。戦争の記憶が希薄化している今だからこそ語っておかなければならない話。右翼系メディアへの露出が多いと目される2人だが、視点は比較的公正中立だと言えよう。耳を傾けるべき内容が多い。

歴史を現代に活かす為に有効な方法は読書であるとしながら、最近のトンデモ「昭和史本」の増殖には警鐘を鳴らしている(見たい歴史・都合の良い事実だけを見る行為を、佐藤氏は「反知性主義」と呼び、現代日本に蔓延する病だと言う)。そんな中、最終章に挙げられた推奨図書14冊は、現代(いま)を生きる我々にとっても必読の書が多いと思う。このリストと解説を見るだけでも良いので、本書を多くの方々にお薦めしたい。

・  ・  ・  ・  ・

余談になるが、佐藤氏はご母堂が沖縄戦の学徒の生き残りとのこと。氏が国際関係・国防やインテリジェンスを意識せざるを得なかった(そしてそのような職業に就いた)理由が垣間見える気がした。

2016年6月8日水曜日

帝国書院編集部(編集)「新詳高等地図」


帝国書院編集部(編集)「新詳高等地図」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4807162160/>
単行本: 170ページ
出版社: 帝国書院 (2015/10/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4807162160
ISBN-13: 978-4807162161
発売日: 2015/10/22

[書評] ★★★★★

ん? 書評に地図帳? 確かに「読書する本」ではありませんが、最近買った本の中で良かったので書かせて下さい。

多くの高校で使われている地図帳ですが、社会人になってからも持っていて損の無い本です。これまで世界経済や政治の文献やニュースにあたる時Google Maps/Earthで地図を見ることが多かったのですが、地図帳を使うと、地名や交通だけでなく、平原や山脈の配置や鉱工業エリアの分布といった情報まで同時に分かるのが非常にヨイです(時と場合により、地図帳とGoogle Maps/Earthを併用)

書籍やWeb記事を読みながら、机の上の書見台で地図帳を開いておく。政治経済関連のニュースや文献に触れるときの、最近の私のスタンダードなスタイルになりました(適度に薄く持ち歩き易いのもヨイです)

社会人にもオススメ♪

2016年6月5日日曜日

池上彰「日本は本当に戦争する国になるのか?」


池上彰「日本は本当に戦争する国になるのか?」(SB新書、2015/12/5)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4797386487/>
新書: 208ページ
出版社: SBクリエイティブ (2015/12/5)
言語: 日本語
ISBN-10: 4797386487
ISBN-13: 978-4797386486
発売日: 2015/12/5

[書評] ★★★★★

2015年の夏、安倍政権(自公連立与党)が強行採択した「安保関連法案」に関する解説書。日本を取り巻く国際環境が複雑化・流動化し、ともすれば戦争の足音さえ聞こえてきそうな時代背景もあろう。安倍政権がこの法案が何故必要だと考えたのか。民主主義社会において、この立法化の手順に問題は無かったのか。本書は、この辺りを総括・解説する。池上氏は手厳しく、消費税増税延期の公約(こちらは最近の国際情勢を見ると雲行きが怪しいが)によって衆院議席の2/3を押さえておいて、後出しジャンケンのように、それとは別に挙げていた公約すなわち改憲が国民の意志だ、というのは掟破りだと言う。安倍晋三首相がやっていることは、母方の祖父・岸信介(きし・のぶすけ)や父・安倍晋太郎を超えたいがために暴走している、ブッシュ・ジュニアがイラク戦争を始めたのにも似た愚かな行為だと言う。

池上氏の本は、為政者の心の中まで見抜くような書き方が多い。本書でも、祖父・岸信介が首相だった時の1960年安保と(岸内閣はその後の混乱の責任をとって退陣)、今回(2015年)の安保関連法との関わり、日米安保や集団的自衛権の行使容認について、多少穿った見方をしているのが興味深い。

池上氏は、衆議院の議席数2/3を許した時点で「任期付きの独裁を認めたことになる」と書いているが(p. 143)、衆参両院の議席数2/3を許してしまうと、改憲の発議も可能になる(改憲が可能であれば「任期」も書き換え可能だ)。一旦そうなってしまったら、その後は大マスコミを通じて国民を煽り、暴走しかねない。戦前日本での多数党解党→大政翼賛会結成や、イタリアの国家ファシスト党、ドイツの国家社会主義ドイツ労働党(ナチス)、これらは全て、民主的な手順を経た上での国家の暴走であったことを我々は忘れてはならない。

安保関連法や集団的自衛権の合憲/違憲性、善悪はともかく、日本社会に生きる者として知っておくべき内容。内容は平易で読みやすく、万人向けだと言えるだろう。お薦め。