2013年4月30日火曜日

M.E.ポーター「競争の戦略」

M.E. ポーター (著), 土岐 坤 (翻訳), 服部 照夫 (翻訳), 中辻 万治 (翻訳)
「競争の戦略 [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478371520/>
単行本: 500ページ; 出版社: ダイヤモンド社; 新訂版 (1995/3/16); 言語 日本語; ISBN-10: 4478371520; ISBN-13: 978-4478371527; 発売日: 1995/3/16
[書評] ★★★★☆
 ハーバード大学のマイケル・ポーター教授による、 企業の競争戦略論に関する最初の研究書。 企業・業界の研究に関して非常に有名な本なので、 細かな説明は不要だろう。
 経営学に経済学の理論を持ち込むことによって、 業界構造分析と経営戦略論を論じる。 企業の収益性は優れた商品やサービスだけで決まるのではなく、 業界構造のあり方によって決まるというのがポーター教授の主張(の1つ)。
 解り易い本ではないが、企業分析を行なう際に、何度でも読み返す価値のありそうな本。

2013年4月29日月曜日

西原理恵子「生きる悪知恵―正しくないけど役に立つ60のヒント」

西原 理恵子 (著)
「生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4166608681/>
新書: 214ページ; 出版社: 文藝春秋 (2012/7/20); 言語 日本語; ISBN-10: 4166608681; ISBN-13: 978-4166608683; 発売日: 2012/7/20
[書評] ★★★☆☆
 人気漫画家・西原理恵子さんが、 「おカネ」「男と女」から「ビジネス」「家族」「トラブル解決法」まで、 波瀾万丈の人生で培った処世術を伝える「人生相談」エッセイ。
 サイバラさんは、相談に対してまっすぐ答えず、課題解決のために問題を設定し直す。 例えば、英語が苦手という人に対しては「フィリピンハブに行け!!」、 姑との不仲に悩む人には「姑の方が先に死ぬ」とバッサリ。 「同僚が小銭を借りて返してくれない」という相談に対して「そんなつまらないことにイライラしちゃうあなたは、仕事が辛いんじゃない?」と切り返す。
 副題に「正しくないけど役に立つ60のヒント」とあるが、 正しくないことなんか1つも書かれていないと思う。 悪知恵という程のことも書かれていない。 至極真っ当なことばかりだが、 誰でもやっている知恵を「再確認」することが出来る。

2013年4月28日日曜日

リー・M・シルヴァー「人類最後のタブー―バイオテクノロジーが直面する生命倫理とは」


リー・M. シルヴァー (著), Lee M. Silver (原著), 楡井 浩一 (翻訳)
「人類最後のタブー―バイオテクノロジーが直面する生命倫理とは」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4140811862/>
単行本: 540ページ; 出版社: 日本放送出版協会 (2007/03); ISBN-10: 4140811862; ISBN-13: 978-4140811863; 発売日: 2007/03
[書評] ★★★★☆
 面白い! この1語に尽きると思う。
 遺伝子工学は人間の“種”としての発展にとっても、今後避けては通れないという話。 著者は遺伝子組み換え等について、積極派でも消極派でもなニュートラルな立場だと言うが、その意見は先鋭的だ。 今後数百年、数千年、数百万年にわたって人類が繁栄するには、バイオテクノロジー、 特に遺伝子工学を“賢明に”利用して、生物医学と生物圏を地球規模で管理していく必要があると説く。
 人類は有史上、農産物や家畜を作るために、種の掛け合わせをするなどして地球上の生物のうち有用なものを改良してきた。 遺伝子組み換えは、この延長線上にあるものであり、避けては通れないものだと言う。ヒト以外の種に対する遺伝子工学は、近いうちに実験レベルではなく、実用レベルで使われるようになるだろう。 現に遺伝子組み換えの作物(大豆、トウモロコシなど)は既に世の中に出回っている。 生態系への影響が十分確認されたか否かはよく分からないが、とにかく既に使われ始めてしまっている。
 問題になるのは、作物・家畜の枠を超えた部分への遺伝子工学の適用だ。 特に、ヒトの胚に対する遺伝子操作が挙げられる。 重篤な病気を避ける為であれば実施は納得できるが、たとえば頭のいい子を作りたいというような優生学的な願望にこの技術を広く応用するとなると、 歯止めがなくなり人間社会全体にどのような影響が出るかは予測できない。
 キリスト教、ユダヤ教、イスラム教といったアブラハム宗教が中心となる社会の中では、 人間の生命、生死の尊厳、霊性といったものに対する畏怖が根強く残っており、ヒトの胚に対する遺伝子治療、あるいは優生学的な遺伝子操作は強く進められることはないと考えているが、 東アジア・東南アジアの企業がそういうことを始めるのを止める力は無い。

 遺伝子組み換え、遺伝子操作に対する嫌悪感の本質は何だろうか。それは、「何が起こるかわからないし、影響が十分に確認出来ていない」ということに尽きると思う。 言うなれば、原子力エネルギーの活用と同じなのだ。 原子力エネルギーの場合は、放射性物質の管理などもあり、大規模な資本投下を行なわないと事業化は難しい。また、武器への転用なども考慮し、世界の監視の下、国家が管理しなければならない技術となっている。しかし、遺伝子操作については、技術革新に伴い、ソコソコの規模の資本で行なうことが出来るようになってきている。 本書には書かれていないが、家畜のクローン化やヒトの胚に対する遺伝子操作は既に行なわれているのかも知れない。おそらく、キリスト教的信条に縛られない、東南アジア辺りのバイオテクノロジー企業によるものになるだろう。

 読んでいて度々連想したのは、「風の谷のナウシカ」(映画じゃなくて原作の方)に出てくる「旧世界のテクノロジー」だ。 家畜を含め多くの動物を作り変えただけでなく、汚染されてしまった地球を浄化するために腐海を生み出した。そして、旧文明の人間たちは、人類を含めた全ての生物を汚染された大地にも適用できるよう、人工的に作り変えた。 作り変えられた生物は、大地の毒なしでは生きていけず、 土鬼(ドルク)の聖都シュワの墓所に隠された旧世界のテクノロジーは、 地球が浄化された後に清浄な大地に適応した人間を作り戻す計画だった。。。

 また、人間の臓器のスペアの製造にブタを使うという話。 「攻殻機動隊」では、ユーザの遺伝子情報から、臓器のスペアをブタの中に作る企業が出てくる。 攻殻機動隊は1995年発表の作品であり、本書の発行より遥かに前であるが、 「攻殻機動隊」が先端技術をリサーチして作られたことがよく分かる(あるいは、たまたま、かも知れないが)。

 いずれにせよ、非常に面白い本である。バイオテクノロジーとサイバーテクノロジーの行く先を占う本として、 興味のある人には最上級クラスでお薦めができる本だ。

2013年4月26日金曜日

イマヌエル・カント「純粋理性批判」(まんがで読破) (コミック)

カント (著), バラエティアートワークス
「純粋理性批判 (まんがで読破)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4781606342/>
文庫: 184ページ; 出版社: イースト・プレス (2011/7/31); ISBN-10: 4781606342; ISBN-13: 978-4781606347; 発売日: 2011/7/31
[書評] ★★★☆☆
 イマヌエル・カントによる哲学書「純粋理性批判」のガイド本。 「純粋理性批判」の他、「実践理性批判」「判断力批判」についても解り易く説明する(これら3冊をまとめて「三批判書」と言われる)。 漫画という形をとって、平易に説明する。
 漫画じゃなかったら絶対読んでいないよなー、的な本。 漫画ではあるが、カントの哲学について述べた本であり、スラスラと読める訳ではない(190ページ通読するのに何時間も掛かってしまった)。 本書を面白いと思うかどうかは人それぞれだと思うが、 「哲学とは何ぞや」「カントって何した人?」と興味のカケラでもある人にとって、イントロダクションとして良いと思う。

マルクス&エンゲルス「共産党宣言」(まんがで読破) (コミック)

マルクス (著), エンゲルス (著), バラエティアートワークス
「共産党宣言 (まんがで読破)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4781602088/>
文庫: 186ページ; 出版社: イースト・プレス (2009/8/30); ISBN-10: 4781602088; ISBN-13: 978-4781602080; 発売日: 2009/8/30
[書評] ★★★☆☆
 マルクスとエンゲルスによる、ユートピアとしての共産主義を説いた本(あまりにも有名な本なので説明不要かとは思うが)。 封建時代も資本主義も、領主/資本家が搾取階級であり、民衆が被搾取階級であるという関係は変わらないという、(当時の)社会の本質を突いた分析と、ユートピアとしての共産主義の提言を行なっている本。
 バラエティアートワークスの手による本書では、 漫画という形をとって、共産主義という考え方の誕生と、共産主義の諸原理について説明する。
 イントロダクションとして優れた本だと思う。

2013年4月24日水曜日

ヒトラー「わが闘争」(まんがで読破) (コミック)

ヒトラー (著)
「わが闘争 (まんがで読破)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4781600115/>
文庫: 190ページ; 出版社: イースト・プレス (2008/10/1); ISBN-10: 4781600115; ISBN-13: 978-4781600116; 発売日: 2008/10/1
[書評] ★★★★☆
 原典はあまりにも有名な本なので、説明の必要はないかも知れないが、 念のため書いておくと、1925年に発表されたアドルフ・ヒトラーの自伝的政治哲学書。 原書邦訳(文庫版:上巻下巻)を数年前に読んでいたが、 最近、「まんがで読破」シリーズも読んでみた。(原書邦訳は、pro/conリストを書きながら読んだので、かなり理解出来ていると思っている←単なる自惚れ?自画自賛?かも知れないが/笑)
 本書(まんがで読破シリーズ)、非常によくまとまっている。 原書のレトリックを排し、エッセンスだけを抜き出して非常に解り易くまとめた本となっている。
 偏った国家主義、差別的人種観を正当化した内容から、現在でもドイツでは法律により出版が規制されている、とのことだが、第1次世界大戦での敗戦の後、全体主義に至るまでの経緯を知るには手っ取り早い本と言える。
 なお、蛇足になるが、ユダヤ人迫害は、ヒトラーが始めたことではなく、ユダヤ教・キリスト教(そしてイスラム教)の歴史で何度も繰り返されたことである。その辺りの歴史的事情も鑑みて読むと、何故ヒトラーがユダヤ人迫害に至ったかの理解の助けになろう。
 「まんが」ではあるが、良書。(★を4つ付けているのは、ヒトラーの主張に対するものではなく、ヒトラーの本を非常に明快に漫画化したバラエティ・アートワークスに対するものです。)

2013年4月23日火曜日

ジョージ・オーウェル「一九八四年」

ジョージ・オーウェル (著), 高橋和久 (翻訳)
「一九八四年[新訳版]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4151200533/>
文庫: 512ページ; 出版社: 早川書房; 新訳版 (2009/7/18); 言語 日本語, 日本語; ISBN-10: 4151200533; ISBN-13: 978-4151200533; 発売日: 2009/7/18
[書評] ★★★★☆
 ジョージ・オーウェルの最後の作品。1949年発表。 全体主義国家が行くところまで行くと世の中はこうなるかも知れない、という話。(ドイツ社会主義労働者党やソビエト連邦共産党という実例もあった。) 封建社会~資本主義社会の間、世の中には3種類の人々が存在してきた。即ち上層、中間層、下層である。「革命」によって全ての人が平等になったという建て前はあるものの、実際には党中枢、党外郭、党に関わりを持たない人々(プロール=プロレタリア)という3層構造は変わっていない。個人所有の否定は、従来よりも従来よりも遥かに少数の人間(のグループ)に富を集中させることを意味していた。
 この社会では、体制が徹底的な情報操作、記録の改竄を行なっている。思想を統制するために、言語も作り変えられて、危険な思想や自由に関わる概念が抹消されている。全ての人が監視される社会であり、民衆が互いに監視し密告する制度がある。体制に都合の悪い言動をした人間は突然「蒸発」させられ、以前から居なかったことにされる。逮捕された人は、洗脳に極めてよく似た操作が執拗かつ恐ろしいほど徹底的に行なわれ、 党への忠誠が「刷り込まれる」。
 「民主主義」とは何か、を考える上で、コインの裏面のような全体主義社会の末路を見ておくという意味で、 本書は必読の書と言えるかも知れない。

2013年4月22日月曜日

忌野清志郎「ロックで独立する方法」

忌野清志郎 (著)
「ロックで独立する方法」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4778311876/>
単行本: 224ページ; 出版社: 太田出版 (2009/7/29); 言語 日本語; ISBN-10: 4778311876; ISBN-13: 978-4778311872; 発売日: 2009/7/29
[書評] ★★★★★
 故・忌野清志郎さんの本を見つけた(亡くなった後に出版されていたのでチェックが遅くなった)。 即買い。これまで、キヨシローさんの音楽を積極的に聴いていた訳じゃないんだけど、
①大学時代のドラムスの師匠がRCサクセションに傾倒していた。②「パパの手の歌」などTV CMで聴いた時に、キヨシローさんに少し興味を持ったことがある。③キヨシローさんが突然自転車(ロードレーサー)にのめり込んで、一気に身近に感じた。④高坂希太郎さん(スタジオジブリや浦沢直樹作品のアニメーターとして有名)が監督した自転車アニメ、 「茄子 アンダルシアの夏」(DVD)・「茄子 スーツケースの渡り鳥」(DVD)のエンディングテーマを演っていたりして、 等々といった経緯で、一気に身近な「格好良いオヤジロックンローラー」になった。
 本の内容として、所謂「ロックな」ものを期待(?)したが、 結構真面目な内容。
・好きなことを続けることは「努力」とは言えないかも知れないが、それ(練習とか曲作りとか)を自分がどれだけ出来ているかが大切。
・高校時代に「夢のバンド」をマンガに描いたが、「自分がはっきりとイメージできるものは、いつか必ず実現する」という大昔の偉人の言葉の通りだったという。 夢があるなら、はっきりと書いておくと良いと言う。
・ステージで演っている時間は密度が濃くて、その合間の時間はまるで魂が抜けちゃったような状態になる。
・昔のヒット曲が一番ウケるなんていう状況に満足したら、それはもうロックじゃない。
・ツアーが終わった後に、よくスランプがくる。魂が抜けたような状態になって、どう頑張っても曲も詞も浮かんでこなくなる。でも、プロはそんな時にも曲を作らなきゃならないことが多々ある。そりゃ無理矢理にでもでっち上げるしかない。
・でも一番いいのは、スランプがきても大丈夫なように、調子のいい時に曲をつくりためてストックしておくこと。
・何の自己規制もなければ、音楽なんていくらでも降って湧いてくる。自分で自分を縛るから音楽が悩み多いものになる。
・「何がウケるか」というマーケティング発想では、やっていて面白くないし、大切なものを見失う。
アーティスト体質(似非アーティストも含む)の人間にとって、共感できるコトが多い。
 キヨシローさんのファンは必読の書だろう。それ以外にも、自分自身に責任を持って生きるとはどういうことか、という観点で見ると、 会社勤務の人間などにもおススメ出来ると思う。

日経ヴェリタス編集部(編集)「これらの人生 お金に困らない本」

日経ヴェリタス編集部 (編集)
「これからの人生 お金に困らない本 (日経ビジネス人文庫)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4532196310/>
文庫: 285ページ; 出版社: 日本経済新聞出版社 (2012/4/3); ISBN-10: 4532196310; ISBN-13: 978-4532196318; 発売日: 2012/4/3
[書評] ★★★☆☆
 人生の色々なステージにいる登場人物を例にとり、 人生における「ガソリン」たるお金の貯め方、運用の仕方、お金に対する考え方について、分かりやすい話を通じて教えてくれる。
 どうも「お金を稼ぐこと」に対して、どうしても後ろ向きなイメージが拭えないのは、 我々日本人が「お金(だけ)を稼ぐことは卑しいことだ」、 「人生で本当に大切なのはお金じゃない」と、それこそ小学生の頃からの道徳教育で教え込まれているからかもしれないが(“お金は不浄のもの”神話?)、 本書はその「タブー」的領域について、前向きに読ませてくれる。(近年は日本でも、個人投資など、資産形成・資産運用に関する情報が色々とオープンになり、またネット取引など身近になり、不労所得というものに対する考え方も随分と欧米化してきているとは思う。…って、頭も神経も使うので、決して「不労」所得などではないと思うのだが、この「不労所得」という表現は、いわゆる「労働の対価」ではないという意味、と考えることにする。)
 税制や諸手続きの内容は、時代とともに変わってしまうものかもしれないが、とりあえず「今」役に立つ情報として有用。お金に対する考え方は、「今」だけじゃなく、この先当分は有効かと。

2013年4月21日日曜日

福岡伸一、阿川佐和子「センス・オブ・ワンダーを探して ~生命のささやきに耳を澄ます~」

福岡 伸一, 阿川 佐和子
「センス・オブ・ワンダーを探して ~生命のささやきに耳を澄ます~」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4479392165/>
単行本(ソフトカバー): 256ページ; 出版社: 大和書房 (2011/10/24); 言語 日本語; ISBN-10: 4479392165; ISBN-13: 978-4479392163; 発売日: 2011/10/24
[書評] ★★★★☆
 福岡伸一氏と阿川佐和子氏の対談の形をとった、 福岡伸一氏の考える生命科学、生命の倫理、その他色々な話。
 福岡氏の本は、 「生物と無生物のあいだ」、 「世界は分けてもわからない」、 「動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか」、 「動的平衡2 生命は自由になれるのか」、と何冊か読んできたが、 氏の主張は首尾一貫していてブレない。 生命とは、タンパク質等の構成要素を組み合わせた機械的な存在ではなく、 多くの分子を取り込み、自らを作り出しながら同時に自らを壊し続けるという「流れそのもの」だという。
 本の書き手としても非常に優れた氏だが、対談もイケている。 本書でも、生命というものに対する視座を再確認させてくれる。 良書。

2013年4月20日土曜日

北方謙三「三国志」(文庫版BOXセット)


北方 謙三 (著)
「文庫版三国志完結記念セット(全14巻) [文庫]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4894569868/>
文庫; 出版社: 角川春樹事務所 (2002/12); ISBN-10: 4894569868; ISBN-13: 978-4894569867; 発売日: 2002/12
[書評] ★★★★☆
 北方謙三氏による「三国志」、文庫版13巻+読本1巻のボックスセット。
 吉川英治氏の手によるバージョン(たとえばこの本)よりも、 登場人物の多くが任侠の漢(おとこ)として描かれていたり、 諸葛亮孔明が(スーパー軍師ではなく)悩める青年として描かれていたり。 「読本」を見ると、どこまでが史実(というか陳寿による「三國志」)に基づいた記述で、どこからが脚色なのかがハッキリ判るが、 北方氏曰くリアリティーの無い物語はバッサリ削除したとのこと(有名な桃園の契りなど、脚色=嘘=っぽいくだりは本書には描かれていない)。
 吉川英治氏バージョンと細かいトコロが結構違うが、テンポ良く読ませるし、面白い。(吉川英治氏バージョンが固いのに対し、北方謙三氏バージョンは入門者にも読み易い本ともなっている。)
 三国志入門書(?)としておススメです。

P.S. 石田衣良氏「池袋ウエストゲートパーク」シリーズの書評を、 全10巻分、別々に書いてしまって間延びしてしまった感が拭えなかったので、 今回は14冊分、一気に書きました。

2013年4月18日木曜日

ナシーム・ニコラス・タレブ「ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質」(上・下)

 
ナシーム・ニコラス・タレブ(著), 望月 衛 (翻訳)
「ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478001251/>
ハードカバー: 312ページ; 出版社: ダイヤモンド社 (2009/6/19); 言語 日本語; ISBN-10: 4478001251; ISBN-13: 978-4478001257; 発売日: 2009/6/19

ナシーム・ニコラス・タレブ(著), 望月 衛 (翻訳)
「ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478008884/>
ハードカバー: 352ページ; 出版社: ダイヤモンド社 (2009/6/19); 言語 日本語; ISBN-10: 4478008884; ISBN-13: 978-4478008881; 発売日: 2009/6/19

[書評] ★★★★☆
 昔、西洋では、白鳥は白いものと決まっていた。そのことを疑う者など一人もいなかった。ところがオーストラリア大陸の発見によって、そこには黒い白鳥がいることがわかった。 白鳥は白いという常識は、この新しい発見によって覆ってしまった。 「ブラック・スワン」とは、この逸話に由来する。つまり、ほとんどありえない事象、誰も予想しなかった事象の意味である。
 人間の思考プロセスに潜む根本的な欠陥を、不確実性やリスクとの関係から明らかにした本で、サブプライムローン危機の後、誰一人予想もしなかったインパクトのある事象が起こる原因を原理的に明らかにした書として、 本書は爆発的に読まれ、全米で150万部超の大ヒットを記録した。
 経済社会が大きくなる前は、持てる者と持たざる者の差は小さかった。それが、経済が大きくなり、複雑化するにしたがって、持てる者と持たざる者の差は大きくなりつつある。(たとえば、ビル・ゲイツの資産。5兆円とも7兆円とも言われるが、2012年の1年間の純増だけでも約6000億円。 一般庶民の理解を超えた、天文学的な金額である。)
 人間が世の中の現象を記述するモデルの多くは「線形モデル」であり、これは「異常値」を予測できるものとはなっていない。 前述の通り「異常な現象」(米国人の所得格差なども異常だろう)を包含した経済を記述・予測するのに使われているモデル(政府や証券会社、銀行、機関投資家が使っている)も、その多くが線形モデルであった。そこでモデルから外れた動きをしたのが数々の金融危機である。このような現象に対する人間の「認知」の限界を書いたのが本書である。
 人間の感覚の多くは対数(log)で記述できるのに(感覚=log(入力)、というイメージ。逆に、入力=A・exp(感覚)とも言える)、 身近な物理現象や金融・経済のモデルは、線形モデルで記述されている。コレってなぁ、、的な感覚を持っていた自分には、本書は「ああ、やっぱりな」的な感じが強かったが、 色々納得させてくれる本だった。
 頭の体操にもなるし、経済現象も含め、近年流行った考え方を垣間見ることが出来る、良書だと思う。

2013年4月17日水曜日

鈴木敏夫「ジブリの哲学―変わるものと変わらないもの」

鈴木 敏夫 (著)
「ジブリの哲学――変わるものと変わらないもの」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4000234951/>
単行本: 256ページ; 出版社: 岩波書店 (2011/8/11); ISBN-10: 4000234951; ISBN-13: 978-4000234955; 発売日: 2011/8/11
[書評] ★★★★★
 映画という娯楽を生み出す上で、時代をどう読むか。 数多くの人が係わって1本の映画を作り出す上で、組織をどう動かすか。スタジオジブリの名プロデューサー、鈴木敏夫氏のものの考え方、 影響を受けた文学、人物、その他多くの物を垣間見せてくれる本。
 鈴木敏夫氏については、「仕事道楽」「映画道楽」(最近文庫本が出ました)、「鈴木敏夫のジブリマジック」(梶山寿子・著)といった数冊の本で読んできたが、いずれも、時代の読み方や人の動かし方について数多くのヒントを与えてくれる。アニメスタジオのプロデューサーについて書かれた本としてだけでなく、ビジネス書としてもちゃんと読める本になっているのが面白い。
 なお、「あとがきにかえて」が「月間日記」(2011/05/19~2011/06/13のもの)となっている。ここに書かれていることが、ラジオ/Podcast番組「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」(本書でも「ラジオ番組の収録」と書かれている)で聞いた内容と重なることもあり、 親近感が持てる。

2013年4月16日火曜日

鶴岡秀子「天国体質になる!―仕事を楽しむ52の秘訣」

鶴岡 秀子 (著)
「天国体質になる!──仕事を楽しむ52の秘訣」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062141388/>
単行本: 213ページ; 出版社: 講談社 (2007/6/29); 言語 日本語; ISBN-10: 4062141388; ISBN-13: 978-4062141383; 発売日: 2007/6/29
[書評] ★★☆☆☆
 人生に対する考え方として、こういうのも良いかも。 多少、認知行動療法的なニオイがするので、向かない人もいるかも知れないが、 軽い読み物として悪くないと思う。

2013年4月14日日曜日

鈴木敏夫「映画道楽」

鈴木 敏夫 (著)
「映画道楽」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4835615409/>
単行本: 247ページ; 出版社: ぴあ (2005/04); ISBN-10: 4835615409; ISBN-13: 978-4835615400; 発売日: 2005/04
[書評] ★★★☆☆
 本書も、スタジオジブリの敏腕プロデューサー・鈴木敏夫氏へのインタビューをもとに作った本。「仕事道楽」(2008年発行)、「鈴木敏夫氏のジブリマジック」(2009年発行)よりも前に出されている本だが、これら同様、鈴木氏ご本人の仕事に対する考え方や、 組織のあるべき姿について述べていて、なかなか興味深い。
 スタジオジブリという組織について学びたい人(?)必読の書。

2013年4月13日土曜日

竹中平蔵「竹中式イノベーション仕事術」

竹中 平蔵 (著)
「竹中式 イノベーション仕事術」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4344021789/>
単行本: 235ページ; 出版社: 幻冬舎 (2012/5/11); ISBN-10: 4344021789; ISBN-13: 978-4344021785; 発売日: 2012/5/11
[書評] ★☆☆☆☆
 んー、、、小泉内閣で経済財政政策担当大臣・金融担当大臣を兼任した、 著者本人の知名度だけで売っている本のような気がする。 割と当り前のことしか言っていないような。
 日本という国家のトップにいた人の著した本とは思えない低いクオリティー。 国家を引っ張っていた人自身がこういう庶民的(笑)レベルとも思えないが、ハイ・クオリティーな人が「小遣い稼ぎ」に片手間に書いた本と思えば納得出来る。
 竹中平蔵氏のコアなファン以外にはおススメ出来ません。

2013年4月11日木曜日

梶山寿子「鈴木敏夫のジブリマジック」

梶山寿子(著)
「鈴木敏夫のジブリマジック (日経ビジネス人文庫)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4532194962/>
文庫: 304ページ; 出版社: 日本経済新聞出版社 (2009/6/2); ISBN-10: 4532194962; ISBN-13: 978-4532194963; 発売日: 2009/6/2
[書評] ★★☆☆☆
 スタジオジブリの敏腕プロデューサー・鈴木敏夫氏へのインタビューをもとに作った本。「仕事道楽」と同様、 鈴木氏ご本人の仕事に対する考え方や、理想の会社組織について述べているのが興味深い。 特にプロデューサーという仕事、役割について鈴木氏がどのように考えているか、どのように取り組んでいるかが垣間見れるのが参考になる。 特に、組織をまとめなければならない立場にある人の意見として、 会社勤めの人間にも参考になる所は多いかも知れない(「仕事道楽」同様、 本書でも、鈴木氏が組織のメンバーに求める仕事のレベルが非常に高いことがわかる)。
 しかしながら。
 ここ数年、スタジオジブリに関する書籍やDVDが続けて出されているが、 本書はそのトカゲのしっぽみたいな物ではないだろうか。レベルの高い他の書籍・DVDの「おこぼれにあずかっている」ような気がする。そういう意味で、ジブリという組織に興味がある人や鈴木敏夫プロデューサー御本人に興味がある人にしか薦められない本…かも知れない。

2013年4月10日水曜日

鈴木敏夫「仕事道楽―スタジオジブリの現場」


鈴木 敏夫(著)
「仕事道楽―スタジオジブリの現場」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4004311438/>
新書: 211ページ; 出版社: 岩波書店 (2008/7/18); ISBN-10: 4004311438; ISBN-13: 978-4004311430; 発売日: 2008/7/18
[書評] ★★★★☆
 スタジオジブリのプロデューサー、鈴木敏夫氏の本。 鈴木氏ご本人の仕事に対する考え方や、スタジオジブリの会社としてのあり様、組織というものについて深く考えさせられる。 会社勤めの人間にとって、p.138の鈴木氏の発言は“深い”。
  「いい作品を作る、これがジブリの目的です。会社の維持・発展は二の次です。ここがふつうの会社とは異なります。」(p. 138より抜粋)
 組織の中で仕事をしている人、チームをまとめて仕事をしている人などには、参考になる場所が多い筈だ。良書。

 ただ、鈴木氏が組織人に求める“仕事”のレベルというのは非常に高いようだ。 実際にスタジオジブリで働くとしたら、ある意味、非常に辛そう。 生活の為の仕事ではなく、仕事のための生活になりそうだ。(笑)

2013年4月8日月曜日

石田衣良「PRIDE(プライド)―池袋ウエストゲートパークⅩ」

石田 衣良 (著)
「PRIDE(プライド) 池袋ウエストゲートパークX」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4167174219/>
文庫: 283ページ; 出版社: 文藝春秋 (2012/9/4); 言語 日本語; ISBN-10: 4167174219; ISBN-13: 978-4167174217; 発売日: 2012/9/4
[書評] ★★★☆☆
 IWGPシリーズ、とうとう10冊目になりました。 例によって短編4本から構成されている。内容は、
 「データBOXの蜘蛛」
 「鬼子母神ランダウン」
 「北口アイドル・アンダーグラウンド」
 「PRIDE―プライド」
の4本。
 本作、何か今までのIWGPシリーズの集大成みたいな気合を感じるのだが、4作目「PRIDE」の末尾で、IWGPシリーズが終わる?or暫く出ない?ことを仄めかす記述あり。ちょっと気になるが、単行本(文庫版より先に出る)も暫く出ていないし、 本当に終りなのかも。
 まぁ、幕の引き方としてはコレで良いのかも、です。

石田衣良「龍涙(ドラゴン・ティアーズ)―池袋ウエストゲートパークⅨ」

石田 衣良 (著)
「ドラゴン・ティアーズ 龍涙―池袋ウエストゲートパーク〈9〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4167174200/>
文庫: 296ページ; 出版社: 文藝春秋 (2011/9/2); ISBN-10: 4167174200; ISBN-13: 978-4167174200; 発売日: 2011/9/2
[書評] ★★☆☆☆
 IWGPシリーズ9冊目。
 「キャッチャー・オン・ザ・目白通り」
 「家なき者のパレード」
 「出会い系サンタクロース」
 「ドラゴン・ティアーズ―龍涙」
の4本の短編からなる。
 4作目は、中国の「戸口(フーコウ)」、すなわち、農村戸籍の者が都市に移ることが出来ないという問題と、 外国人研修制度の問題に触れている。今の時代を反映した、ホットな話題を題材にしているのは良いのだが、 問題の解決方法が登場人物の将来を縛りまくってしまう、「やっちゃったー!」な内容。ちょっとイタダケマセン。

2013年4月6日土曜日

石田衣良「非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパークⅧ」

石田 衣良 (著)
「非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク〈8〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4167174170/>
文庫: 301ページ; 出版社: 文藝春秋 (2010/9/3); ISBN-10: 4167174170; ISBN-13: 978-4167174170; 発売日: 2010/9/3
[書評] ★★★☆☆
 IWGPシリーズの8冊目。
 「千川フォールアウト・マザー」
 「池袋クリンナップス」
 「定年ブルドッグ」
 「非正規レジスタンス」
の4本の短編からなる。 非正規雇用問題などホットな話題を題材にしつつ、池袋を中心とした街や登場人物の描き込み方が濃いのは相変わらず。テンポよく読ませる。

2013年4月5日金曜日

石田衣良「Gボーイズ冬戦争―池袋ウエストゲートパークⅦ」

石田 衣良 (著)
「Gボーイズ冬戦争―池袋ウエストゲートパーク〈7〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4167174146/>
単行本: XXX p ; 出版社: 共立出版 ; ISBN: 4320025636 ; (1991/10)
[書評] ★★★★☆
 IWGPシリーズ、7冊目。内容は
 「要町(かなめちょう)テレフォンマン」
 「詐欺師のヴィーナス」
 「バーン・ダウン・ザ・ハウス」
 「Gボーイズ冬戦争」
の短編4本。この中で、「Gボーイズ冬戦争」は、以前の作品とも絡む内容(7冊目=短編で数えて28作目で漸く、といった感じ)。 他の多くの作品で、IWGPシリーズの主人公・真島誠(マコト)は話の進行役(or狂言回し?)のような立ち位置なのに対し、 本作ではストーリー上も主人公になっている。 前作以上のテンポで勢いよく読ませる。

2013年4月4日木曜日

石田衣良「灰色のピーターパン―池袋ウエストゲートパークⅥ」

石田 衣良 (著)
「灰色のピーターパン―池袋ウエストゲートパーク〈6〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4167174138/>
単行本: XXX p ; 出版社: 共立出版 ; ISBN: 4320025636 ; (1991/10)
[書評] ★★★☆☆
 IWGPシリーズ、6冊目。例によって短編4本からなる。その内容は、
 「灰色のピーターパン」
 「野獣とリユニオン」
 「駅前無認可ガーデン」
 「池袋フェニックス計画」
となっている。
 主人公、真島マコトのディテールの描き込みがだんだん細かくなって行っているのも、 本書の面白さの1つか。前作で取り戻したテンポの良さは、本書でも同じ。勢いよく読める。

石田衣良「反自殺クラブ―池袋ウエストゲートパークⅤ」

石田 衣良 (著)
「反自殺クラブ―池袋ウエストゲートパーク〈5〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/416717412X/>
文庫: 296ページ; 出版社: 文藝春秋 (2007/9/4); ISBN-10: 416717412X; ISBN-13: 978-4167174125; 発売日: 2007/9/4
[書評] ★★★☆☆
 IWGPシリーズ5冊目。4本の短編、
 「スカウトマンズ・ブルース」
 「伝説の星」
 「死に至る玩具」
 「反自殺クラブ」
で構成されている。
 ん、なんか最初の頃のテンポが戻ってきた感じ。 勢い良く読むことが出来る。
 1冊目を読んだ後、面白かったからIWGPシリーズを大人買いしてしまったのだけど(笑)、3冊目、4冊目の中弛み?を経験してしまった後だったら買わなかったかも(苦笑)。

2013年4月2日火曜日

石田衣良「赤(ルージュ)・黒(ノワール)―池袋ウエストゲートパーク外伝」

石田 衣良 (著)
「赤(ルージュ)・黒(ノワール)―池袋ウエストゲートパーク外伝」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4167174103/>
文庫: 323ページ; 出版社: 文藝春秋 (2006/01); ISBN-10: 4167174103; ISBN-13: 978-4167174101; 発売日: 2006/01
[書評] ★★★☆☆
 IWGPシリーズと時代・背景を同じにしつつ、違う主人公が紡ぐ物語。IWGPシリーズの副読本(?!)として面白い。

2013年4月1日月曜日

石田衣良「電子の星―池袋ウエストゲートパークⅣ」

石田 衣良 (著)
「電子の星 池袋ウエストゲートパークIV」
<http://www.amazon.co.jp/dp/416717409X/>
文庫: 309ページ; 出版社: 文藝春秋 (2005/9/2); ISBN-10: 416717409X; ISBN-13: 978-4167174095; 発売日: 2005/9/2
[書評] ★★☆☆☆
 IWGPシリーズ4冊目。
 「東口ラーメンライン」
 「ワルツ・フォー・ベビー」
 「黒いフードの夜」
 「電子の星」
の短編4本。 前作同様、ちょっと中弛みが感じられるが、 「電子の星」は結構イケるかも。