2013年4月18日木曜日

ナシーム・ニコラス・タレブ「ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質」(上・下)

 
ナシーム・ニコラス・タレブ(著), 望月 衛 (翻訳)
「ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478001251/>
ハードカバー: 312ページ; 出版社: ダイヤモンド社 (2009/6/19); 言語 日本語; ISBN-10: 4478001251; ISBN-13: 978-4478001257; 発売日: 2009/6/19

ナシーム・ニコラス・タレブ(著), 望月 衛 (翻訳)
「ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478008884/>
ハードカバー: 352ページ; 出版社: ダイヤモンド社 (2009/6/19); 言語 日本語; ISBN-10: 4478008884; ISBN-13: 978-4478008881; 発売日: 2009/6/19

[書評] ★★★★☆
 昔、西洋では、白鳥は白いものと決まっていた。そのことを疑う者など一人もいなかった。ところがオーストラリア大陸の発見によって、そこには黒い白鳥がいることがわかった。 白鳥は白いという常識は、この新しい発見によって覆ってしまった。 「ブラック・スワン」とは、この逸話に由来する。つまり、ほとんどありえない事象、誰も予想しなかった事象の意味である。
 人間の思考プロセスに潜む根本的な欠陥を、不確実性やリスクとの関係から明らかにした本で、サブプライムローン危機の後、誰一人予想もしなかったインパクトのある事象が起こる原因を原理的に明らかにした書として、 本書は爆発的に読まれ、全米で150万部超の大ヒットを記録した。
 経済社会が大きくなる前は、持てる者と持たざる者の差は小さかった。それが、経済が大きくなり、複雑化するにしたがって、持てる者と持たざる者の差は大きくなりつつある。(たとえば、ビル・ゲイツの資産。5兆円とも7兆円とも言われるが、2012年の1年間の純増だけでも約6000億円。 一般庶民の理解を超えた、天文学的な金額である。)
 人間が世の中の現象を記述するモデルの多くは「線形モデル」であり、これは「異常値」を予測できるものとはなっていない。 前述の通り「異常な現象」(米国人の所得格差なども異常だろう)を包含した経済を記述・予測するのに使われているモデル(政府や証券会社、銀行、機関投資家が使っている)も、その多くが線形モデルであった。そこでモデルから外れた動きをしたのが数々の金融危機である。このような現象に対する人間の「認知」の限界を書いたのが本書である。
 人間の感覚の多くは対数(log)で記述できるのに(感覚=log(入力)、というイメージ。逆に、入力=A・exp(感覚)とも言える)、 身近な物理現象や金融・経済のモデルは、線形モデルで記述されている。コレってなぁ、、的な感覚を持っていた自分には、本書は「ああ、やっぱりな」的な感じが強かったが、 色々納得させてくれる本だった。
 頭の体操にもなるし、経済現象も含め、近年流行った考え方を垣間見ることが出来る、良書だと思う。

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