2014年11月12日水曜日

谷光 太郎 「青色発光ダイオードは誰のものか―世紀の発明がもたらした技術経営問題を検証する」


谷光 太郎 「青色発光ダイオードは誰のものか―世紀の発明がもたらした技術経営問題を検証する」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4526055735/>
単行本: 183ページ
出版社: 日刊工業新聞社 (2006/01)
ISBN-10: 4526055735
ISBN-13: 978-4526055737
発売日: 2006/01

[書評] ★★★★☆

今年のノーベル物理学賞受賞者、中村修二教授著「ごめん!」(Amazon拙書評)のレビューを先日(19th/Oct./2014)書いた。青色発光LEDの基材・GaN(窒化ガリウム)製造方法の発明者の、一方的な意見だけを読むのも不平等なので、より中立的な視点を持っていると思われる人が書いた本を読んでみた(「ごめん!」と一緒に買っておいたまま積読本だったものを続けて読んだ…が実態/笑)

内容は、GaNの製法特許に関わる裁判の統括と、同様の発明の対価に関する訴訟についてのレポート。多くの資料からの引用が中心で筆者によるコメントは少ないが、よくまとまっている。

発明の価値や知財戦略について、どう考えれば良いか/どう取り組めば良いか、についての明確な答えは無し。しかしながら、これらの裁判をキッカケに始まった、日本の司法の取り組み(特許法の改正、知財高裁の設立など)についても解り易く書かれている。内容は本書発行時のものであり最新ではないが、非常によくまとまっており、参考になる。

メーカ従業員として、あるいは1人の技術者として、「知的財産の価値」や「知財戦略」をどう考えれば良いかのヒントにはなる。

・  ・  ・  ・  ・

以下雑記:

中村氏の発明の対価について。
  1. 青色LEDの製造技術全般の中で、中村氏の寄与が全てではないこと(窒化ガリウム以外の半導体素子製造技術も非常に多いこと、窒化ガリウムの製造技術自体が中村氏1人だけで実現したのではない)
  2. 「世界初」「世界一」のトップ技術(中村氏の担当)だけでなく、「安定」かつ「高良品率」に製品製造する量産技術(他の人が担当)も非常に重要であり、特に後者が無いことにはメーカは利益を生み出せない
  3. 製品開発にあたって、経営者側もリスクを取って投資を続けたこと
等を鑑みるに、高裁審の判決結果(6億円、利息込で8.4億円で和解)は、まぁ妥当な所ではないか(少なくとも桁違いには多くも少なくもない)、と思う。本書はそんな私の考えを裏付ける(補強する)ものとなった。

「業界内で無理と言われていた技術を、世界に先駆けて実現した」発明に対して、もう少し報いてくれても良いのではないかな~とか思うのがイチ技術者としての正直な感想(笑)。でも、ノーベル賞のニュース、それに中村教授-日亜化学工業の関係改善のニュースもあり、まぁ良い落とし所だったのでは、とも思う。

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