2013年11月17日日曜日

水島 温夫 (著)「『技術者力』の高め方―戦略思考で研究開発・製品開発が変わる!」


水島 温夫 (著)「『技術者力』の高め方―戦略思考で研究開発・製品開発が変わる!」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4569632386/>
単行本: 262ページ; 出版社: PHP研究所 (2004/02); ISBN-10: 4569632386; ISBN-13: 978-4569632384; 発売日: 2004/02
[書評] ★★★★★

著者は著名な経営コンサルタントの方。バブル崩壊以降低迷するわが国の製造業界を憂いて書かれた(であろう)本。各個人における仕事のあり方とか、「本書は技術者に『喝!』を入れるために書いた」(冒頭)等、微妙に今の時代とのズレも感じなくもないが(約10年前の本だからその辺は仕方が無い)、内容は概ね今でも充分通用すると思う。

本書はその題名通り、技術者として会社業績に貢献できる“力”について書いている。“力”というより、業績に貢献できる“仕事の進め方”といったほうが正確か。

バブル崩壊と前後し、日本にはMBA(経営学修士)やMOT(技術経営)に代表される、数多くの欧米流の経営手法が多く取り入れられてきた。モノ作りも組織作りも、その手法は組合せ的に行なう。組織についても、業務遂行はトップダウン、管理は個人単位。

でもそれだけじゃ日本の強さは活かせませんよね、わが国の高度成長期~バブル期の製造技術を強力に支えてきた手法もうまく組み合わせて、必勝パターンを作りましょうという話です。製品や市場のタイプに応じて、旧来日本で用いられてきた手法の代表例、摺り合わせによるモノの作り込みや、QCなどに代表される現場主導型の解決手法を用いると、それらを持たない欧米型の物作りに勝てるぞ!という内容です。

中には、技術者「個人」がやるべきことというより、マネジャー以上が考えるべき組織運営に関わることも多少あるのだが、数年以上の技術者経験(研究開発、営業技術、製造技術)を積んだ人には納得できる内容が多いのではないだろうか。

著者の主張は非常に明快で解り易く、すんなり頭に入ってくる。また、東レが国内で作って世界中に輸出しているABS樹脂の素を「秘伝のタレ」と言ってみたり、平易でイメージしやすい表現が多い。本書では、各製品のユーザ側から見た価値によって、欧米方式の良い所と、日本方式の良い所を使いわけ、必勝パターンを作りましょうという内容。本書の構成自体、和洋折衷となっており、そこも面白かったりする(全体のおおまかな構成は最初に結論を述べてから説明をする欧米風、各節は解り易い例から入って最後に結論に持っていく日本風)。

今ではもう入手困難というのが勿体無い。是非再版して多くの技術者に読んで欲しい本である。

・・・

余談:ここ数ヶ月、ビジネス書を殆ど読まずに過ごして来てしまいました(夏前から暫く、ラノベなぞにはまったのも大きな理由の1つ)。ので、これから暫く「巻き」でビジネス書中心に行きます。年末に向けて書庫一掃セール、みたいな。(ほんまかいな?どこまで出来ることやら。)

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