2013年8月16日金曜日

西尾維新 「物語」シリーズ

西尾維新「物語」シリーズ

[シリーズ書評] ★★★☆☆

人気作家が「100%趣味で書いた」本。作家御自身が本気で楽しみながら書いたことがよく伝わる本。設定やストーリー展開がよく練られていることも勿論あるだろうが、この「本気で楽しみながら作ったこと」が読者に伝わって来るのが、本シリーズの爆発的人気の根本にあると思う。TVアニメ化されるのも頷ける作品(現在「セカンド・シーズン」放映中)。

色々と「やり過ぎ」な感じもあり、ハードルがちょっとだけ高い作品かも知れないが、ソコがクリア出来る人にとっては面白い作品だと思う。

まず、古くから使われているラブコメものの基本をキッチリ押さえている。
  • 主人公は地味目の少年:厨二病気質で友達が殆どおらず、心が弱い(自分自身が怪異モドキになった後は、スイッチが入ると強くなることもあるが)。
  • 巻き込まれ系:物語のスタートは、主人公が自分の責任でない事件に巻き込まれることで始まる(その後の方向性を選択したのは主人公自身なのだが)。
  • ハーレム構成:主人公(少年)以外の登場人物の多くは美少女で、彼女らは皆、主人公に対して好意的な感情を持つに至る。
  • エロ要素:基本的に本筋と直接関係の無い所で必要以上にエロを強調されている気もするが、客引き効果は充分か。中高生が読んで良いギリギリのレベル…をちょっと超えているような気もするが。
  • 多くのタイプの萌え少女:ツンデレやらロリやら委員長タイプやら色々出てきます。全員に共通しているのは性格が極端であること(現実世界にいたら「痛い」人たちではある)。
先に書いた「ハードルの高さ」だが、具体的には以下についてである:
  • グロいシーンが時々出てくる:妖怪変化とのバトルシーン(アニメでは映像化に問題ありそうな箇所は単色画面+文字+音声だけ、となっているが)。
  • 精神的なエグさも多い:本シリーズに出てくる「怪異」の起源の多くは、人の心に宿る闇だ。登場人物の多くは、心に闇を持っている人、心に狂気を宿している人だ。耐え難いストレスや狂おしいほどの嫉妬心がバンバン出てくる。
あと、気になる点がいくつかある
  • 言葉遊びや他の作品からのネタが多すぎて、ちょっと(否、カナリ)しつこい(作者が古い文学作品から漫画、アニメ、近年のサブカルチャーまで幅広く押さえていることはよく解るのだが)。特に登場人物間のボケ・ツッコミが…。
  • 主人公エロ過ぎ。ちょっとしつこい感じアリ。というか、中高生のエロに対するハードルってこんな低くて良いのか?と心配になるレベル。

①西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「化物語(上) (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2006/11/1)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062836025/>
②西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「化物語(下) (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2006/12/4)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062836076/>

怪異と出会い、自身が怪異化してしまった主人公・阿良々木暦が、高3のGW明けに出会った別の怪異の話。

③西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「傷物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2008/5/8)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062836637/>

主人公・阿良々木暦の高校2年-3年の間の春休みに起こった怪異現象を書いた本。阿良々木暦が初めて怪異と出会った経緯を描き、時系列的には本シリーズのとっかかりとなる部分。シリーズ中の重要人物・羽川翼のが果たした役目も書かれており、本シリーズの後の方を読む上でもキーとなる本だと思う。

④西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「偽物語(上) (講談社BOX) [単行本]」(講談社、2008/9/2)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062836793/>
⑤西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「偽物語(下) (講談社BOX) [単行本]」(講談社、2009/6/11)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837021/>

阿良々木暦の2人の妹、火憐と月火に関する物語。なんだ、暦くん、家族で1人だけ怪異に出会っていた訳じゃなかったのね、みたいな。

⑥西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「猫物語 (黒) (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2010/7/29)
<http://www.amazon.co.jp/dp/406283748X/>

本作ではクラスの委員長・羽川翼に関する物語。高3のGWに起こった怪異現象の話。時系列的には「化物語(上・下)」の直前の話。

◆セカンド・シーズン

⑦西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「猫物語 (白) (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2010/10/27)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837587/>

本作の主人公は再度羽川翼。だが、猫物語(黒)と対になっているように見えて、違っていたりする。

時期は高3の2学期の始め頃で、語り部も羽川翼になっている(本シリーズのこれまでの語り部は阿良々木暦)。阿良々木暦が語り部をやっている時に特徴的な無意味に冗長な言葉遊びが無い分、テンポ感が良い。阿良々木暦と異なる世界観、認識で書かれてるのが面白い。

それにしても。猫言葉(?)、すげー読みにくいです。ストーリーが面白くなければ途中で放り出していたかも。

⑧西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「傾物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2010/12/25)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837676/>

本書のイントロとラストのヒロインは、(“こちら”の世界では蝸牛の怪異であるところの)八九寺真宵。タイムトラベル、パラレル・ワールド(異世界)が出てくる。ノリとしては「涼宮ハルヒの分裂」「驚愕(前・後)」に近いか。

⑨西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「花物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2011/3/30)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837714/>

本作の語り部は、シリーズの主人公・阿良々木暦の1年後輩のスポーツ少女、神原駿河。最初は「猫物語(白)」に続いて語り部を変えてきただけかと思っていたが、そうではなかった。よく考えると、神原駿河の母親は怪異に因縁浅からぬ人であったし、駿河自身が母親の形見として怪異を受け継いだ人だったよな。

ちなみにこの本は、精神的に疲れている時には読むべきではないかも知れない。シリーズ中、心の闇を最も深く書いた本だからだ。読者の元気を「エナジードレイン」してしまう本と言えるかも知れない。最後まで読めばちゃんとオチはつくのだが。

⑩西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「囮物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2011/6/29)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837765/>

本作の語り部は、シリーズ主人公・阿良々木暦の下の妹・月火の元同級生、千石撫子(中学2年生)。自分を変える為の努力をしない(ある意味ダメダメな)少女が、日常押し隠している気持ち、抑え込んだ感情が溜まりにたまり、これに嫉妬が加わって狂気となり、怪異と関わってしまうという話。

思春期に入ったけれど自己認識が子供のままの少女の魂の叫びが切ないというか、痛々しい。

本シリーズ、色々なことが起きていながらバッドエンドは少ないのだが、本書はその少ないバッドエンドの1つか?

⑪西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「鬼物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2011/9/29)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837811/>

蝸牛の怪異(迷い牛)・八九寺真宵が成仏を選ぶまでのドタバタを描いた話。それまでの経緯を説明する上で、吸血鬼(の成れの果て)・忍野忍の過去の話が出てくる。結局、忍は自分たちに迫っていた現象(怪異、ではないらしい)についてよく解っていなかったのだが。
忍にもよく解っていなかった事情を、神原駿河の叔母・臥煙伊豆湖(怪異がらみのエキスパート)が出てきて全部説明しちゃうあたり、ちょっと御都合主義的な感じがしないでもないが、それなりに楽しめる。

八九寺真宵が成仏を選ぶくだりは泣かせる。

最後に、忍野扇(阿良々木暦と同じ高校の1年生)が時系列的におかしなことを言いまくっている。何かの伏線か?

⑫西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「恋物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2011/12/21)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837927/>

「囮物語」のオチのような話。

詐欺師・貝木泥舟が今回の語り部であり、メインアクトでもある。嘘をつき、人を騙すことを生業?としている貝木の語りが面白い。語り部が高校生ではなく、30代(という設定)のキャラが語ることは、含蓄のある台詞が多くて面白い。

貝木がキッカケとなった戦場ヶ原家の崩壊だが(娘・ひたぎは、本シリーズの主人公・阿良々木暦の恋人)、考えようによっては、貝木が戦場ヶ原家(の特に娘)の為に行なったのではないかと思える記述あり。貝木は“嘘吐き”だから自分の“本心”は語っていないので何とも言えないが、貝木がひたぎに好意を持ち、彼女を家庭崩壊から(理想的でないにせよ)かなり妥当な形で救った、と見ることも出来る(ひたぎに対する貝木のラブ・ストーリーと捉えることも出来る)。

語り部・貝木泥舟の意図した形でのエンドは迎えていないが、結果としてはハッピーエンドだと言えるかもしれない。読んでいて、ちょっとホッとしたりして。

◆ファイナル・シーズン

⑬西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「憑物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2012/9/27) 
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062838125/>

本書の副題は「よつぎドール」。怪異のスペシャリストで陰陽師・影縫余弦(かげぬい よづる)の憑喪神・斧乃木余接(おののき よつぎ)が活躍する。余接の、阿良々木暦との待ち合わせでの登場の仕方がシュール(ラストでの再登場の仕方もシュール)。ストーリー的には予定調和という感じなのだが、高校3年生の2月という受験生にとって非常に大切な時期に、シリーズの主人公・阿良々木暦の怪異化がさらに進んでしまう!

1年近く前に暦を吸血鬼から人間に戻すのを全力でサポートした忍野メメ(現在行方不明)の姪、忍野扇の現われ方とか、気になる伏線?が一杯。本シリーズもあと「暦物語」「終物語」「続終物語」で完結となる筈だが、この先どうなる? 気になって仕方が無い。

⑭西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「暦物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2013/05)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062838370/>

シリーズの主人公・阿良々木暦の高校3年生の春から大学受験(2次試験)当日までのショートストーリー集。基本的には、これまで大きな出来事を中心に構成されていたストーリーの間を縫う、小さな出来事や、そもそも出来事とも言えないような事、を中心に12話構成となっている。

にしても。このラストは「???」だ。暦は死んだのか? 再度目覚めた時に、成仏した筈の八九寺真宵がいたということは、暦も成仏したということなのか? バッドエンドどころじゃない、デッドエンドじゃないか! 「花物語」(阿良々木暦らが高校を無事卒業して大学に進学した後の話)と矛盾無く繋がる(であろう)ことを考えると、話はそう単純じゃないのだろうけど。

この辺り、続巻(未刊)の「終物語」「続終物語」で語られるのだろうか。非常に気になる。。。

※当初、ファイナルシーズンは「憑物語」「終物語」「続終物語」の3冊の予定だったが、「終物語」の前に「暦物語」が出てきた。作者曰く、「改めて阿良々木暦達が過ごした一年を振り返り、繋がりを確認してみたかったという作者的事情によるものです」とのこと。

⑮「終物語」→未刊
⑯「続終物語」→未刊

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