2015年8月15日土曜日

山崎 豊子 「沈まぬ太陽〈1~5〉」

山崎 豊子(著)「沈まぬ太陽〈1~5〉」

[書評] ★★★★★

多くの人たちには説明するまでもない作品だが、30年前の1985年8月12日に起きた、航空史上最悪の事故、JAL123便の御巣鷹山事故(1985)を中心に、事故の温床となった組織の腐敗、政界・官僚との癒着の実態を描き出した作品(初出1995~1999)。
  • この作品は、多数の関係者を取材したもので、登場人物、各機関・組織なども事実に基き、小説的に再構成したものである。(1・2巻冒頭但し書き)
  • この作品は、多数の関係者を取材したもので、登場人物、各機関・組織なども事実に基き、小説的に再構築したものである。但し御巣鷹山事故に関しては、一部のご遺族と関係者を実名にさせて戴いたことを明記します。(3~5巻冒頭但し書き)
とある通り、小説とするために脚色は入っているものの、ベースは実話。10年以上にわたって海外の僻地に“流刑”された主人公も、実在の人物をベースにしている。臭い物に蓋の組織体質(事故を隠蔽し改善が行われない)、政財界・官僚との癒着、一部の従業員による業務上横領・特別背任行為が「既得権益」となっていた実態、…挙げたらキリがない。が、本作品を読むと、御巣鷹山事故が起こるべきして起こった人災であることと、また遺族がどんな扱いを受たかがよくわかる。

山崎女史の他の作品にも言えることなのだが、取材等を通じた事実確認は非常に丁寧だ。海外に赴任した人の生活が目に映るように描かれている。企業の中でどのように「裏金」が作られるのか、また一部の従業員がどのように私腹を肥やしているのかも生々しい。企業が政財界・官僚とどのように「癒着」しているのかの例もよく分かる。…読んでいて、腐敗臭に顔をそむけたくなる位だ。

本書を通して、御巣鷹山事故に関する詳しい話を知るのも良い(上述の通り、小説の体裁は取っているが、事実をベースとした作品である)。事故はどのように起こるのか、事故を未然に防ぐにはどうしたら良いのか、安全に関わる製品・サービスを扱う人と組織はどのようにあるべきかを考えるのも良い。政財界・官僚と企業の関係についてあるべき姿を考えても良い。…色々と考えさせられる作品。

人の生命や財産の安全に関わるサービスや製品に携わっている人には必読書と言って良いだろう。それ以外にも多くの人にお薦め出来る。

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以下書籍情報:


山崎 豊子(著)「沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上)」(新潮文庫、2001/11/28)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101104263/>
文庫: 409ページ
出版社: 新潮社 (2001/11/28)
ISBN-10: 4101104263
ISBN-13: 978-4101104263
発売日: 2001/11/28


山崎 豊子(著)「沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下)」(新潮文庫、2001/11/28
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101104271/>
文庫: 483ページ
出版社: 新潮社 (2001/11/28)
言語: 英語
ISBN-10: 4101104271
ISBN-13: 978-4101104270
発売日: 2001/11/28


山崎 豊子(著)「沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇」(新潮文庫、2001/12/26)
<http://www.amazon.co.jp/dp/410110428X/>
文庫: 510ページ
出版社: 新潮社 (2001/12/26)
言語: 英語
ISBN-10: 410110428X
ISBN-13: 978-4101104287
発売日: 2001/12/26


山崎 豊子(著)「沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上)」(新潮文庫、2001/12/26)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101104298/>
文庫: 510ページ
出版社: 新潮社 (2001/12/26)
言語: 日本語
ISBN-10: 4101104298
ISBN-13: 978-4101104294
発売日: 2001/12/26


山崎 豊子(著)「沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下)」(新潮文庫、2001/12/26)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101104301/>
文庫: 420ページ
出版社: 新潮社 (2001/12/26)
言語: 日本語
ISBN-10: 4101104301
ISBN-13: 978-4101104300
発売日: 2001/12/26

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