2016年3月5日土曜日

小保方 晴子(著)「あの日」

久しぶりに本屋をハシゴしました(教育教材が豊富な店とかサブカル系に強い店とか色々ありますが、どの店でもランクインしている本とかあり、世の中の流行が分かるのも面白いです)。某ネット通販サイト大手で「おすすめ」されちゃった本で、どうしても気になる物が何冊かありました。実物を見て(目次を見たりざくっと斜め読みしてみたりして)から買うかどうか決めたいと思ってリアル店舗に行ったのですが、何故か予定外の物も買ってしまい、大き目の紙袋に本がギッシリ(笑)。この癖直さないと、また本棚が大変なことになる…(てゆーか既に本棚に入りきらない分が、膝くらいの高さのタワーで縦列駐車している…/汗)。読むスピードも考えて買わないとな~。

閑話休題。今回は先週末リアル店舗でレジ脇に積まれていたのをつい手に取って買った本です(数週間前に話題にもなっていて気になっていましたし、目次と数ヵ所をチェックして、そのままレジへ)

小保方 晴子(著)「あの日」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062200120/>
単行本: 258ページ
出版社: 講談社 (2016/1/29)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062200120
ISBN-13: 978-4062200127
発売日: 2016/1/29
[書評] ★★★★☆

あのSTAP騒動の当事者、小保方晴子さんの手記。

理化学研究所の若い美人研究員がノーベル賞級の発見を行なったということでセンセーショナルに報道されたが、その後の顛末は周知の通り。

前半は研究者としてのシンデレラストーリー。後半は件のSTAP細胞にまつわる諸々の話。最後の方に書かれている、強引な取材や悪質な報道については、読んでいて心が痛む。早稲田大学の学位剥奪もどうなのよ?と思うところがあるが、この世界において正義というものは無く、それぞれの立場と都合があるに過ぎない…ということがよく分かる。青色発光ダイオードの中村教授もそうだったが、この手の事件が続くと、世界的な研究をしたいと希望を抱く学生が減るのではないだろうかとチョット心配。

一般人からは、正しいこと・真実だけが生き残ると考えられている学術界も、実は非常にドロドロした世界で、勝ち馬の尻馬に乗りたい人が多く、各研究者が利権争いをしていること、そして都合が悪くなった人は簡単にポイ捨てされる世界なんだなぁと再認識した(再認識…というのは、学生時代にボロ雑巾のように使われ磨滅させられ最後には捨てられてしまった人を何人か見てきたので)。特に今回は美人で優秀な女性研究者ということで、指導教官に(おそらく下心アリで)最初は可愛がられたけど、その教官と違う意見を言って少々「煙たい」存在になった途端に味方してもらえなくなった…というだけのコトかも知れない(始末が悪いことに、女子に限らない話だが、外見等で得をしている人のうち結構な割合が、自分がそれで得をしていることを自覚しつつも、同じ原因でチョットしたことで簡単に敵を作ってしまうこと(例えば美貌が仇になって嫌われやすいとか)については結構無自覚なんだよな~)。それが、ノーベル賞ものの研究内容だったから、ちょっとした不正?ズル?がものすごく大きな形で裏目に出た。それだけのことだったのではないだろうか。

本書から得られる教訓を挙げるなら:
  1. 研究内容(実験方法・結果)については全て自分の目で確認し、自分で評価しろ。
  2. データも論文も最新版を発表できるように常に準備しておけ。間違い等を指摘された時にはキチンと説明できるようにしておけ。
  3. 他人の褌で相撲を取ろうとする輩に気を付けろ。特に自分が簡単には逆らえない立場の人(上司や指導的立場にある人)が「がめつい」人の場合には要注意。
  4. チーム(プロジェクトチーム等)で仕事をする際は、各メンバーが納得する形で、全員がハッピーになるようなゴールを目指させ(そうしないとプロジェクト全体がコケるる可能性が非常に高くなる)
  5. 一度注目を受けると、過去に遡ってアレやコレが根掘り葉掘り暴かれてしまう(STAP騒動が無ければ小保方氏は早稲田大学から博士号を剝奪されることもなく、研究者として特等席とも言える立場に居続けることが出来ていただろう)。研究者に限った話ではないが、表舞台に出たいと思う人は、子供の頃から後ろめたいことは一切しないに限る。
  6. 自分のセックスアピールを利用するのもホドホドにせぇよ(研究内容と結果「だけ」で勝負せよ)
今回の騒動では、データや図表の不備(不正?)を指摘された辺りが発端だったと思うが、…当たり前と言えば当たり前のことなのだが、自論からずれるデータを除きたくなったり、サンプル写真に写り込んだゴミをPhotoshop等で消したくなったり、自社製品の性能や製造技術を良く見せる為にデータに下駄を履かせたくなったり、…といった「悪魔の囁き」は、多くの研究者が経験していることだろう。というか、「そういったデータ操作はは一切やったことがありません」などという人は殆ど居ないのではないだろうか;本質的でない“操作”はセーフだよと言う人もいれば、あらゆる“改竄”はアウトだと言う人もいるが、…キレイ事だけを言っていてはナカナカ生きていけないのがこの世界の難しいトコロ。

さて。

今回のSTAP再現実験で、STAP幹細胞が作られたのかどうかよくわからないまま終わってしまった一番の理由は、細胞の多能性を持つことを示すために取ったその手段、すなわち:
  • 多能性を誰の目にもわかる形にするため、キメラマウスを作製することを提案した人がいた(ハードルが何段階も上がってしまい、さらに小保方氏がコントロールできない領域の話になってしまった)
  • そのキメラマウスを作る過程には、小保方氏本人は直接関わることが出来なかった(技術も教えてもらえず、自分でやることは出来なかった)
の2点に尽きると思う。前者については、インパクトは小さくなるかも知れないが、他の検証方法ではいけなかったのだろうか(キメラマウスを作ればそれはインパクトは強かっただろうが)。また、ネイチャーに投稿した論文では、キメラマウスを作製したのが、小保方氏を自分の研究室に招聘しながらも受け入れてもらえなかった若山照彦氏の手によるものだったというのが何とも…。理研で行った再現実験では、この若山氏は協力を拒否している。

もしかしたら多能性を持つ細胞は出来ていたのかも知れないし、そうでないのかも知れない。素人目には薮の中だ。それにしても、一連の騒動から暫く経つが、その後STAP現象の追実験をしたという報告も聞かれないし、本書が出された後数ヶ月経つが、若山氏からの反論も無いようだ。あの騒動は一体何だったのだろう? と思うと同時に、何故かSTAP幹細胞に関わる米国出願特許が未だ無効になっていない等もあり、この辺りに陰謀論めいた何かを考えたくもなる…。
  • ちなみに、同じ時に同じ店で、STAP騒動についてM新聞社のS記者による暴露本(?)も見掛けた(斜め読みもした)。が、買わなかった…のは、事実無根と思える内容が多かったことと、悪意に満ちた書き方が鼻についたからだ。冷静かつ客観的に書かれた本があったら見てみたいが、…調査委員会の報告が「客観的だ」ということにされちゃっているから、小保方さん断然不利だなぁ…。
読後感として、どうにもスッキリしない本だ。が、大学や研究機関、企業内研究開発部署に所属する人間には、一読をお勧めする。自身が行っている研究の本当の目的は何か。自分が研究に求めるものは何か。色々考えさせられるはずだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿