2016年12月24日土曜日

武田綾乃「響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ」(前編・後編)

連投2日目。

武田綾乃「響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ」(前編・後編)

[書評] ★★★★☆

「響け!ユーフォニアム」のサイドストーリー。「響け!」で北宇治高校に通う主人公・黄前久美子(おうまえ くみこ)と同じ中学から、吹奏楽、特にマーチングの全国的な強豪校である立華高校に進んだ佐々木梓(ささき あずさ)が主人公。担当楽器はトロンボーン。

吹奏楽部はよく体育会系文化部と言われるが、マーチングは体育会系運動部だ(笑)。本作もマーチング「あるある」話が多い。
  • 私の場合、マーチング経験は大学時代。楽器を持たない基礎練の時は蹴りは飛んで来るし、楽器を持っていても竹刀(しない)で叩かれるし。この竹刀、ビニールテープが分厚く巻かれていて、コレで打たれると非常に痛かった(涙)。しかも尻じゃなくて腿狙って来るし(←半端無くチョー痛い/泣)。そこで体験した、若さゆえの暴走、あるいは狂気。そういったものが本書にも描かれていて(懐かしい用語が連発!)、色々と思い出してしまった…。
さて、本作。強豪校だから、練習は厳しい。しかも、マーチングだから、座奏メインの吹奏楽団以上に体育会系、上下関係も厳しい。が、全国を狙うのだから、学年に関係なく技術の優れた子がオーディションを通る。称賛と嫉妬の入り交じった感情。そういう環境の中での、脆そうに見える友情。主人公の梓は向上心があり、非常に練習熱心な生徒。吹奏楽を始めた理由がちょっと泣けるのだが(この後に出た『北宇治高校の吹奏楽部日誌』での著者インタビューによると、作者・武田さんの経験に基づくストーリーのようだ)、吹奏楽以外のことを疎かにし過ぎていないか?…という訳で、一部、感情移入がちょっと難しい場所もあった。
  • 作者の武田さん御自身にはマーチングの経験が無いのか、練習の生々しさはイマイチ伝わって来なかったことも多少あるかも…座奏中心の1~3巻が非常に面白かったので、ついこれと比べてしまうのも酷かも知れないが…。
  • あと、吹奏楽「だけ」のために転居してまで入学した生徒がいたり、極端なキャラクターが多過ぎることも感情移入しにくい理由だったかも知れない。
    • と書いている私の知る人の中に、御子息に本格的に吹奏楽をやらせるために転居したという「極端な親御さん」がいるのだが…(千葉県内は吹奏楽を含めた部活動に熱心な公立高校がいくつもあるが、地域が偏っているのでこういうこともまれにある)。
 

武田 綾乃(著)「響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ 前編」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4800258723/>
文庫: 336ページ
出版社: 宝島社 (2016/8/4)
言語: 日本語
ISBN-10: 4800258723
ISBN-13: 978-4800258724
発売日: 2016/8/4

武田 綾乃(著)「響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ 後編」
<http://www.amazon.co.jp/dp/480025874X/>
文庫: 347ページ
出版社: 宝島社 (2016/9/6)
言語: 日本語
ISBN-10: 480025874X
ISBN-13: 978-4800258748
発売日: 2016/9/6

「響け!」1~3巻で、立華高校は北宇治高校のライバル校(そして全国的な強豪校)として度々登場、また梓も久美子の友人として度々出ているので、ストーリーが一部重複する。「響け!」1~2巻とほぼ同じ時系列で、多視点的な書き方になるので、一部既視感のあるシーンもある(同じシーンを別の人の視点から描いているので当然なのだが)。梓と久美子との会話で、同じ会話内容なのに2人が感じていることが全然違ったりしていることがチョット面白い。

ところで、この同じシーンを多視点から描くというのは流行なのだろうか? 最近よく見るスタイルのような気がする。

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