2016年9月11日日曜日

田坂広志「知性を磨く― 「スーパージェネラリスト」の時代」


田坂広志(著)「知性を磨く― 「スーパージェネラリスト」の時代」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4334038018/>
新書: 229ページ
出版社: 光文社 (2014/5/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4334038018
ISBN-13: 978-4334038014
発売日: 2014/5/15

[書評] ★★★★☆

本書は、多くの専門家(スペシャリスト)を統合して動かすジェネラリストになるには、どのような“修行”(人生経験)を積めば良いかを示す本。経営者・管理職は勿論、2~3人の小編成のチームリーダや関係部署・協力会社の人に動いて貰わないと仕事が進められない全ての人(つまり大部分の組織人)にとって、考えさせられるところ大だと思う。

そもそも「知性」とは何か。筆者はこう書く。
  • 「知能」とは、「答えの有る問い」に対して、早く正しい答えを見出す能力。
  • 「知性」とは、「答えの無い問い」に対して、その問いを、問い続ける能力。(p. 15)
深い表現である。「知能」(正解のある問いに正しく答える能力)は、読書や机上の勉強により比較的簡単に身につけられる。が、「知性」はそんな簡単には身につけられない。この「知性」は、実社会生活を送りながら、たえず自己反省を繰り返し、答えを求め続けることによってしか得られないという。

同様に、「智恵」は「知識」とはどう異なるかについても書いている。
  • 「知識」とは、「言葉で表せるもの」であり、「書物」から学べるものである。
  • 「智恵」とは、「言葉で表せないもの」であり、「経験」からしか学べないものである。(p. 54)
経験を積んだ社会人は、若い世代と同じ「知識」のレベルで競争するのではなく、過去の経験から掴んだ「智恵」を活かすべきだという。

今後「知識社会」になっていくと言われて久しいが(言い出したのはP・ドラッカー氏だったか)、この「知識社会」では、その名とは裏腹に、(検索すればすぐ出てくるような)知識は役に立たなくなる。形式知・知識知ではなく、暗黙知・経験知が重要になって行く。今後さらに重要になる能力は、この暗黙知・経験知を自ら育み、さらに他人に伝える or 形式知化・知識知化する能力だろう。

本書でちょっと残念なのが、
  • 同じ文言を何度も書いている箇所が多く、少々くどい点。
  • 太字で強調している箇所が多すぎて、何を強調したいのかがよく解らなくなっている点。
  • 後半になるに従い、「紙数に限りがあるので」と、自身の別の著作を参照するように薦めている点。紙数に限りが…と言う割に、空行や同じ文言の繰り返しが多く、限りある紙面を無駄遣いしているようにも見える(笑)。
が、この辺りは一種の語り口調、一気読み(読み返し無し)でも読者に内容をきちんと理解させようという筆者の真摯な姿勢なのかも知れない。

何はともあれ、暫く経ってから(“寝かせて”から)再読してみようと思える本ではある。

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