2014年3月19日水曜日

恵比須 半蔵(原作), ichida(漫画)「うちの会社ブラック企業ですかね?」 (コミック)


恵比須 半蔵(原作), ichida(漫画)「うちの会社ブラック企業ですかね?」(彩図社、2012/6/26)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4883928691/>

コミック: 127ページ
出版社: 彩図社 (2012/6/26)
言語: 日本語
ISBN-10: 4883928691
ISBN-13: 978-4883928699
発売日: 2012/6/26

[書評] ★★★★☆

本当にあった過酷な仕事のエピソードをもとに、シニカルかつコミカルに描いたブラックな漫画。

社会人で、この漫画の内容を「あるある」と笑っていられる人がいるだろうか? 自分には関係のないことだと思ってしまわないだろうか? 誰が見てもブラックな企業はともかく、そうでない企業でもソフトなブラック化が進んでいる職場は多いのではないだろうか。

ファストフード店員のエピソードでの会話
  • うちの店みたいな、人手足りない→仕事きつい→きついから新人がすぐ辞める→人手足りない、っていうループってどうすりゃいいんかね
    (p. 54より引用)
は以下のように読めてしまった。
  • うちの事業部みたいな、業績が良くないから人員整理→人手足りない→仕事きつい→きついから倒れる人・辞める人が出る→業績がさらに悪くなる、っていうループどうすりゃいいんかね?
…笑えない。

それと、生保マン&生保レディのエピソードでの会話。
  • 上司 「同期が辞めていく中常にトップギアで走り続けて今の俺があるんだ」
  • 主人公「…っていうのは全てバブル期の話で、自分の成功体験がみんなに通じると思ってるんですよ」
    (p. 123より引用)
これは30代後半~40代半ばの我々の多くが、50代以上の人たちに抱く思いではないだろうか。上は、根性論だけで全てが通用すると思っている。しかし、環境が変わってしまった今、本当は仕事のやり方(つまり会社組織の有り方自体)を変えないといけない筈なのだが、会社の「改革」と言っても実態は、業務ツールの変更だったり(業務がどんどんペーパーレス化・オンライン化される)、組織の名称変更だけだったりする。肝心なのは「ヒト」と、そのヒトが作る組織の構造改革、そしてヒト同士の「コミュニケーション方法」の改革なのだと思うが。過去の成功体験を引き摺っている人達には、こういった「実を伴う改革」を求めるのは無理なのだろうか?

「おわりに」(p.126~)にも書かれているが、この本に書かれたような状況は、
  • 特殊な会社のエピソードだけをセレクトした訳ではなく、どこにでもある普通の職場の影の部分に過ぎない
  • ほんの少し歯車が狂うだけで、誰もが彼らと同じ状況に身を置くことになるかもしれない可能性がある
今の日本の「職場」は簡単にブラック化しうるのだということを認識させるマンガ。

じゃぁ労働者としてどう対策を取れば良いか? その問いについての答えは与えられていないが(それはまた別の本を調べるなりプロに相談する)、「うちの会社、何か変じゃない?」と思ったら、①自分を守る、②職場を変える、が必要だ。自分の職場をまだ変だとは感じていなくても、こういう問題がごく身近なものであると考えた方が良い。

そういう意味で、ブラック企業問題が身近な問題であることと多くの人に問題を認識させる本として(しかも解り易い形である)、良書だと思う。

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