2014年5月21日水曜日

姜尚中(著) 「悩む力」、「続・悩む力」

 

姜尚中 (著)「悩む力」(集英社、2008/5/16)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4087204448/>

新書: 190ページ
出版社: 集英社 (2008/5/16)
言語: 日本語
ISBN-10: 4087204448
ISBN-13: 978-4087204445
発売日: 2008/5/16

姜尚中 (著)「続・悩む力」(集英社、2012/6/15)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4087206475/>

新書: 224ページ
出版社: 集英社 (2012/6/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4087206475
ISBN-13: 978-4087206470
発売日: 2012/6/15

[書評] ★★★☆☆

本書では、変化の激しい「現代」を生きるための力として「悩む力」を挙げる。「続・悩む力」は、「3・11」をキッカケに、「悩む力」をさらに深化して書かれた本。

明治時代の一等国イギリスに留学した文豪:夏目漱石と、ドイツの社会学者:マックス・ウェーバーという、ほぼ同時期を生きた2人の生きざまと作品にヒントを探す。
  • 夏目漱石(1867年2月9日(慶応3年1月5日)~1916年(大正5年)12月9日):小説家、評論家、英文学者。明治の文豪。
  • マックス・ウェーバー(Karl Emil Maximilian Weber, 1864年4月21日~1920年6月14日):ドイツの社会学者・経済学者。
この2人は、19世紀末~20世紀初頭の先進国のイギリス/ドイツで、「文明の行きつく先」と、その結果「個人の行きつく先」を見てしまった。その悩みが作品に現われているという。筆者(姜尚中さん)は、彼らの作品の中に、激動の時代を生きる力(のヒント)を求める。

戦後日本は、西洋化により合理化が進み、物質的には豊かになった半面、たとえば以下のような面で、「幸せ」を感じにくい世の中になっていると述べる。
  • 個々人が自然や共同体、宗教から切り離されてしまっている(「自由」を得た代償)
  • 各個人の幸せの形は人の数だけある筈なのに、「人並みの幸せ」という(実はハイスペックな)ものを手にいれようとしている(←実は「人並みの幸せ」は多くの人は手に入れられない)
  • 技術や社会の変化のスピードが早すぎることが我々にとって大変な重圧となっているのと同時に、我々が欲する「不動の価値」は求めるべくもない
こんな現代社会を幸せに生きるために、本書は以下のヒントをくれる:
  • 自我…独りで考えるものではなく、人とのつながりの中に見つけるべきもの
  • “幸せ”は各個人の考え方次第(他人との比較で決まるものではない)
  • 社会から仲間として承認されるための手段として、「働く」必要がある
これらは、これまで私が考えてきた「人生」「幸福」よりも広い視野を貰えた気がする。

しかし、憂鬱や絶望はどの時代にもある筈で現代(戦後日本)に限った話ではないことと、全ての人々が同じ憂鬱・絶望を抱いている訳ではないであろうこと(個人も多様化の時代→故に一般化は難しいのではないか?)、…と、醒めた目で読むと、議論不足な感も否めない(新書の限られた文章量では結論までは辿り着けそうもないが)。

人生や幸福というものを、このような観点から見るのはある意味新鮮だったし、色々と考えさせられた。そういう意味で、読書した意味はあったかなあ、という感じだ。他人に薦められる本かと聞かれれば、各自のご判断でどうぞ(読む人によって薬にもなりうるが読者全員ではなさそう)、というところか。

※歯切れの悪い書評で申し訳ない…。

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