2015年1月7日水曜日

グレン・グリーンウォルド 「暴露:スノーデンが私に託したファイル」

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。新年早々、シリアスな内容の本を…。

グレン・グリーンウォルド (著), 田口俊樹 (翻訳), 濱野大道 (翻訳), 武藤陽生 (翻訳)「暴露:スノーデンが私に託したファイル」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4105066919/>
ペーパーバック: 384ページ
出版社: 新潮社 (2014/5/14)
言語: 日本語, 日本語, 日本語
ISBN-10: 4105066919
ISBN-13: 978-4105066918
発売日: 2014/5/14

[書評] ★★★★☆

某電器量販店の店員さんにオススメされて買った本(笑)。

ホットな時期からだいぶ遅れてしまったが: ニュースに流れて(一部で)大騒ぎになった、スノーデン氏による米国国家安全保障局(NSA)内部情報の暴露事件と、その機密文書の内容に関する本。NSAが中心となり、全ての通信やコンピュータ内容の多くがNSAを始めとするスパイ機関に傍受されているという内容。

米国スパイ機関は、インターネット企業(Facebook、Yahoo!、Google、Apple、Microsoft等)上の全データを裏から覗き見している。このスパイ機関は、世界中の多くのコンピュータをマルウェア(不正プログラム)に「感染」させ、画面情報やキーストロークを傍受している(クレジットカードの番号は勿論、銀行口座を始めとする取引の内容まで筒抜けだということだ)。このスパイ機関は、米国企業(Cisco等)製ネット機器に通信を傍受する装置を組み込んで出荷している。このスパイ機関は、誰が誰にEメールを送ったのか、内容も含めて傍受している。このスパイ機関は、携帯電話にもマルウェアを仕込んで、電源が切られた状態でも盗聴器として使えるようにしている。

Googleは(だけでなくMicrosoft BingやYahoo!もそうだが)、各個人(マシン)の検索内容の記録をとっている。この情報は主に検索エンジンを「賢くする」のに使っているのだが、各個人がどのような検索を行っているか、またどのページにジャンプしたか、といった個人のネット上での全行動がアメリカのスパイ機関にダダ漏れだということだ。SNS (Facebook、Google+など)も然り。誰が誰とつながっていて、どのようなやりとりを行っているかも、アメリカのスパイ機関には丸見えになっている。自分のPCがマルウェアに感染していたら最悪だ。そのPCを使った「行為」は逐一アメリカのスパイ機関に送られている。この世は、プライバシーというものが無い世界になりつつある。

勿論、世界中を流れる情報全てをアメリカのスパイ機関が処理しきれる訳もないが、常にアクセス可能であることが問題なのだ。当局に一旦マークされてしまったら、PC/ネットを介した行動は当局に筒抜けだと覚悟した方が良い。漫画/アニメの「攻殻機動隊」に描かれている世界はそんなものだし、有り得る話だとは思っていたが、予想以上だった。ガッカリなのが「邪悪になるな」をスローガンとして、中国の検閲当局とも戦ったGoogleまでが、米国諜報機関には情報をダダ漏れにさせてしまっているということだ(以下文献参照)
  •  参考図書:スティーブン・レヴィ「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ」(阪急コミュニケーションズ、2011) (Amazon拙書評)
悪いことをしようしなくても、誰もが“微妙”なことをすることはあるだろう。車で多少スピード違反をしているのと同じで、慣例的に見逃されている(見逃さないと世の中がスムーズに回らない)ことでも、誰かを捕まえたいと思った時にはいくらでも理由になる。法律違反ではなくても、多少後ろめたさを感じるような行動(倫理に反するチャットやアダルトコンテンツの閲覧など)を暴かれて、個人が貶められるかも知れない(本書の著者も同性愛者であることを暴かれている)。交友関係や資産の詳細情報、生活の詳細な情報が暴かれるかも知れない。そこにはもうプライバシーは存在しない。

まさに、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』の世界だ。

自分の身をどのように守るかを考えた方が良い時期に来ているのということなのだろう。日々PCやネット、携帯電話を使っている人は(つまり殆どの人だ)、御一読をお勧めする

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