2017年5月21日日曜日

タル・ベン・シャハー「ハーバードの人生を変える授業2 ~Q 次の2つから生きたい人生を選びなさい~」


タル・ベン・シャハー(著), 成瀬まゆみ(翻訳)「ハーバードの人生を変える授業2 ~Q 次の2つから生きたい人生を選びなさい~」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4479305912/>
文庫: 368ページ
出版社: 大和書房 (2016/5/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4479305912
ISBN-13: 978-4479305910
発売日: 2016/5/12

[書評] ★★★☆☆

前著「ハーバードの人生を変える授業」(リンク等は後述)の続編。前著が人生や生活におけるネガティブな経験・記憶よりもポジティブなものに焦点を当てなさい、ネガティブなことから学ぶべきことを学んだら心から切り離しなさい、といった内容だったのに対し、本書は「頭で判っている“正しい選択”をキチンと選び、行動しなさい」という本。訳者あとがき(p. 364)の
  • 「正しい選択は、わかっていますよね。
    でも、それを、本当に、あなたは、選ぶことができますか?
    そして今日も、明日も、それを選び続けることができますか?」
    この本は、そう問いかけてきます。
    ある意味、「覚悟」を問う本です。
が、この本の全てとも言える。

前著同様、「分かっちゃいるけど、なかなかね…」な内容が多いのだが(苦笑)、幾つか良い点もあったので示しておく。
  • 面倒くさいこと、気の進まないことをやるのに以下の方法は有効だと思う。とりあえず始めてみて、勢いをつける作業を、筆者は「5分間テイクオフ」と呼んでいる。
    • ベストタイミングなどを待ったりせず、「いますぐ始める」という選択をしてください。(p. 54、強調は引用者)
  • 「あら探しする」よりも「いいこと探し」をし、自分や他人の長所に目をつける。
  • 失敗から学ぶことと同様、成功からも学ぶべき。
  • 現代社会のストレス対処法として、流れに身を任せることを勧める本が多い。が、本当に幸せになる為には、自ら積極的に選択~行動をすることが必要。
  • 夢をあきらめて現実的になることを勧める書籍が多いが(確かにこれで傷つくことは減るだろう)、夢を追い求め続けることこそが人生だ。
本書の主旨を乱暴にまとめると、感情主体の「自動反応」よりも、理性主体の「熟慮」により行動を選択しなさい、とでもなるだろう。しかし、日常生活で行なっている「選択」の多くを「熟慮」するのは、現実には難しいのではないか
  • 我々は日常的な判断の多くを「無意識」あるいは「流れ」で行っている。これを「意識的」に「熟慮」するスタイルに変えるのは、非常にシンドイ生き方ではないのか。
  • ひらめき、耽溺、無謀といった「自動反応」無しでは、生活に面白味が無くなってしまうのではないか。少なくとも、ある程度は「自動反応」任せにしないと、精神がもたない。
  • 理性では「こちらの選択が正しい」と分かっていても、感情面からなかなか行動できない人が多いのではないだろうか。本書は、この心理的・感情的な障壁の克服法については全く触れておらず、その点については突き放しているとも言える(人生を「自分自身が行う選択の連続」とする捉え方は、アドラー心理学(自身に対して厳しい生き方を求める)との共通点が多いように思う)
本書では「流れに身を任せる生き方」「目の前にある人生を生きること」を否定する。流れに身をまかせ、可もなく不可もない「ヌルい生き方」をしている人には、良い刺激を与える本と言えるだろう。だが、困難な状況にある人は、ある程度「流れに身を任せ」、「全ての責任を他人のせいにする」ことも必要だと思う。自身が「ヌルい」と思っている部分は本書に書かれたように意識的な選択を行うと有効だろうが、自動反応(感情)-熟慮(理性)のバランスは崩さない方が賢明だろう(シーナ・アイエンガー著『選択の科学』(後述)の方がバランスの取れたものの見方だと思う)。精神的に強い人はどんどん意識的な選択をしても良いのかも知れないが、凡人は「話半分」で良いと思う。

関連図書
余談1:著者・訳者について
  • 著者:タル・ベン・シャハー(Tal Ben-Shahar、英語版Wikipediaリンク)はテルアビブ(イスラエル)生まれ、ハーバード大学に学んだ人だが、ヒンドゥー教や仏教などの思想、そしてヨガなどの東洋文化に傾倒しているように見える。洋の東西を問わず、「心」や「周囲との調和」を研究する人が東洋思想に行き着くのは、昔も今も変わらないのかも知れない。
  • 訳者:成瀬まゆみ氏は専業翻訳家ではなく、ポジティブ心理学を使った「アタラシイジブン」づくりのコンサルタント(講演やセミナー等の活動を行なっている)。前訳でもそうだったが、読みやすく綺麗な日本語には好感を持てる(近年、ビジネス書の邦訳などで多少日本語が乱れているものが目につくようになって来ているが、本書の邦訳は正統派の日本語だ)
余談2:ポジティブ心理学

ポジティブ心理学」という言葉を初めて使ったのは、エイブラハム・マズローとされる。マズローは、企業研修などでよく聞く「自己実現理論」で、有名な「マズローの5段階欲求ピラミッド」を提唱した心理学者(1908-1970)。マズローのモデルは科学的ではないとの批判もあるが、社会組織における心理学や動機付けに関するひとつの見方として、今でも参考になると思う。

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