2014年1月8日水曜日

レイ・ブラッドベリ(著)「華氏451度」

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

さて、今年の1冊目です。レイ・ブラッドベリ「華氏451度」です。


レイ・ブラッドベリ(著), Ray Bradbury (原著), 宇野 利泰 (翻訳)
「華氏451度 (ハヤカワ文庫SF) [文庫]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4150116911/>
文庫: 338ページ
出版社: 早川書房 (2008/11)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150116911
ISBN-13: 978-4150116910
発売日: 2008/11

[書評] ★★★★☆

華氏451度は摂氏233度にあたり、紙が自然発火する温度だという。本書は、読書や本の所有が禁じられた“近未来”を描いた物語。

この世界の住民は、本の無い世界を生きている。仕事以外の時間は、耳にはめて聴く超小型ラジオや、家の壁一面に取り付けられた大型テレビにより、24時間娯楽を提供されている。そこで行われていることは愚民化政策そのものである。ディテールに違いこそあるものの、現在の我々の生活に酷似した世界が描かれている。原書が発行されたのが1953年であることを考えると、慧眼というほかない。発行当時はSFだったかも知れないが、今読むと時代風刺小説として読める。

本書の主人公は、この本を燃やす“焚書官”であるが、ふとしたきっかけから自分の仕事に疑問を持ち、そこから物語は始まる。人類の叡智の積み重ねから生まれる「本」、そして、自分自身の頭で考えること。読書や思考のための「時間」。現代の我々が失いかけているものを、本書は思い出させてくれる。

読んでいる人はとっくに読んでいる本だろうから、おすすめも何もないのだが、まだ読んだことがない人にはお勧めできる本である。

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