2015年4月22日水曜日

小林 よしのり「ゴーマニズム宣言SPECIAL 新戦争論1」 (コミック)

小林 よしのり「ゴーマニズム宣言SPECIAL 新戦争論1」
単行本: 449ページ
出版社: 幻冬舎 (2015/1/28)
言語: 日本語
ISBN-10: 4344027132
ISBN-13: 978-4344027138
発売日: 2015/1/28

[書評] ★★★★☆

多くの人には紹介するまでもないと思うが、本書の著者・小林よしのり氏は「ゴーマニズム宣言」シリーズで有名な漫画家で、ノンフィクション(主に日本の政治や歴史に関する内容)を中心に描いている人。過去の著作等から小林氏はナショナリストと考えられることが多いが、本書はそういうイメージを覆す。

侵略戦争は否定するが、自衛戦争は肯定する。日本の政治家を非難することはあるが、我々の祖先が築いた国と歴史は擁護する。その上で、最近日本で戦争に対するハードルが低くなってきていることに対し、自身が血を流し国を守る覚悟があるのか、戦争の悲惨さを知った上で戦う覚悟があるのかと問いかける。

戦争を他国・他人のものとしてではなく、自分と同胞の問題として再考させる良書。ただし、良識と判断力のある大人向けの漫画であることは示しておくべきだろう。

◆雑記1:分析眼と視点

アメリカが始めたイラク戦争を支持するということは、どういうことか? 著者の反米の態度は一貫している。それでいて、小泉政権・安倍政権の政治には反論する立場をとり、一握りの富裕層のみを潤して中間層を没落させる「売国行為」と喝破する。2人とも靖國参拝で国際的に波風を立てた宰相として有名だが、著者によると、これは自身を「保守」に見せかける隠れ蓑 or 目くらましだという。この分析は非常に鋭い。

また、戦後米国により日本人を洗脳し、反米から親米に変えたプログラム、WGIP (War Guilt Information Program)を、一部の人だけの知識から広い読者層の知識とした功績も大きい。

さらに、近年の嫌韓・反中ブームの過剰なナショナリズムのもたらす排外主義・国際間緊張といった危険性についても、納得できる主張だ。

◆雑記2:歴史認識

開国・明治維新後、第2次世界大戦までの日本の在り方を否定しない著者の態度は、一部の人から滅多打ちにされる可能性がある。良識ある大人として、小林氏のような見方があることは知っておくべきかも知れないが、その主張を鵜呑みにするのもまた危険であること考えておくべきだろう。

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