2012年8月10日金曜日

門倉貴史「ワーキングプア ―いくら働いても報われない時代が来る」

門倉 貴史 (著)
「ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る (宝島社新書) (新書)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4796655336/>
新書: 222ページ ; 出版社: 宝島社 (2006/11/9) ; ISBN-10: 4796655336 ; ISBN-13: 978-4796655330 ; 発売日: 2006/11/9 ; 商品の寸法: 17.2 x 10.6 x 1.6 cm
[書評] ★★☆☆☆
 格差社会、ワーキングプアの問題にスポットを当てた書。
 モノを語るには充分なデータが不足しているきらいがある。それを補うためか、お涙頂戴系のドキュメントが沢山載っている。 取材をするのは大変だっただろうが、あくまでも一例を羅列しているのみ。Amazon.co.jpの書評などを見ると、本書を高く評価しているものが多いが、 私はデータの詰めの甘さと、(ドライなデータでなく、 筆者が恣意的に選べる取材対象を用いた)感情に訴える書き方には、 問題提起の書としては未完成な部分を感じる。 出版元が宝島社ということで、…まぁこんなモンかと納得しておこう。
 格差社会の問題を取り扱う上で本当に大切なのは、 生まれ来た時から持たざる者をどう保護して行くか、 「持つ者」と「持たざる者」がどのように共存していくかだと思うのだが、そういった観点からの議論は殆どされていない。
 著者は本書の最後で格差是正の決定打として「支出税」なる税制度の導入を提唱している。この支出税のコンセプト自体は良いかも知れないが、 実現方法は、正直者が馬鹿を見るシステムとなっている。この辺りのフィジビリティをもう少し追求して、こなれた議論が出来るとなお良いと思うのだが、…。(この筆者は、支出税のアイデアは他の著書にも書いているようだ。)
 今ホットなネタを取り上げた書としてはちょっと物足りない。

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