2012年7月3日火曜日

稲盛和夫「アメーバ経営」

稲盛 和夫 (著)
「アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役 (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4532312957/>
単行本: 256ページ ; 出版社: 日本経済新聞社 (2006/09) ; ISBN-13: 978-4532312954 ; ASIN: 4532312957 ; サイズ (cm): 19 x 13
[書評] ★★★★☆
 京セラ・第二電電(現KDDI)創業者、稲盛和夫氏による「アメーバ経営」指南本。
 アメーバ経営とは、社内の組織を活動単位毎に「アメーバ」と言われる組織(社内カンパニーとも言えよう)に分け、あらゆる活動を費用という観点で見て、 各アメーバの活動を管理し、発展させていこうという方法論である。
 但し、この「方法」だけ導入すれば全てがうまく行く、という甘いものではないことに注意されたい(そんな方法論は存在しないだろう)。 稲盛氏も述べているが、アメーバ間の利害は相反する場合が多い。これを調整するのは並大抵のことではないだろう。
 アメーバ間の取り決めは基本的に当事者同士で決める、となっているが、 利害が相反する場合など、どうしても交渉がまとまらない場合がある。 一段上の立場の人(部門長、事業部長など)が仕切る必要がある。ということは、部門長・事業部長には全体最適のための落とし所を決める責任と、これを各アメーバに納得できるように説明できる責任があることになる。
 アメーバの集合体としての会社をきちんと機能させるためには、 企業経営という観点から人をきちんと育てる必要がある。 優れた人がいても組織がきちんとしていないと会社はきちんと動かないが、 組織の仕組みだけでは足りないということ。アメーバ経営という方法論を自社に取り込むという活動は大いに結構だが、 経営者・従業員をきちんと教育する、人を育てるという活動もきちんと行わないと、 絶対にまともに機能しないものだということを理解すべきだろう。
 と、つい否定的に書いてしまったが、ビジネスの基本は「人間として何が一番大事か?」に尽きる、と明確に示してくれているのが本書の大きな特徴だ。 自分にも、会社という組織の中で生きている立場として、この言葉は非常に大きな力を与えてくれたように思える。
 稲盛氏の文章は朴訥で、さらっと読んだだけではその真髄はなかなか伝わって来ないが、アメーバ経営のキモの部分、さらにはビジネスの基本の部分の考え方が非常によくまとまっていると思う。 本書を読んでもよく分かるが、「アメーバ経営」はその方法(スキーム)だけ取り入れても たぶん全く機能しない。アメーバ経営の研修を受けた(現在受けている)管理職の方々にこそ読んで欲しい、そんな1冊である。

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