2012年7月14日土曜日

ヘンリー・ミンツバーグ「MBAが会社を滅ぼす」

ヘンリー・ミンツバーグ (著), 池村 千秋 (翻訳)
「MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方 (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822245160/>
< http://bpstore.nikkeibp.co.jp/item/main/148222451600.html>
単行本: 556ページ ; 出版社: 日経BP社 (2006/7/20) ; ASIN: 4822245160 ; サイズ (cm): 21 x 15
[書評] ★★★★☆
 なかなか刺激的な題名の本だ。
 この本は、前半部で現在のMBA教育の問題点を実例とともに示し、 後半で今後のマネジメント教育がどうあるべきかを説き、カナダのマギル大学での取組とその成果を示す。
 20世紀終盤から、米国と日本(の一部の人の間)でMBAが大流行している。が、この学位(MBA=Master of Business Administration)は、元はと言えば、1908年に経済学・経営学の傍流として誕生した学位に、1950年代末に唱えられた戦略を取り入れたものである。もともと、米国(そして日本の戦後)の大量生産時代のマネジメントのメソッドを学問としたものである。
 過去、イノベーティヴな経営を行って大きな成果を残した経営者の中に、MBA取得者は実に少ない。 社会の変化に伴い、会社のあり方も変わってきている中、 旧態依然のMBA教育を受けた者が、本当の意味での「成果」を出せる筈もないのだ。にもかかわらず、今でもMBA取得者がマネジャーとして、 企業での出世階段に乗れるのは何故か。それは、MBA取得者の(ごく)一部が過去に大きな成果を残したという事実と、 彼らのネットワーク(「学閥」による人脈とも言い換えられよう)によるものである。
 本書はMBAの優れた点には一切目もくれず、 暗い点にばかり焦点を当てている。だから、本書の内容「だけ」を信じてはいけないと思う。たとえば、前のIBM社長のルイス・ガースナーはMBA取得者である。 彼はMBA取得と自らの経験から得た手腕で、瀕死のIBMを生き返らせた。
 本書の意義は、世の中でもてはやされている「MBA」が良いばかりでないことを世の中に知らしめ、かつ、今後のマネジメントのあるべき姿を示すことにあるのだろう。 本書とは別に、岩瀬大輔・著「ハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にて」(日経BP社、2006/11/16)と比較して読んでみるのも面白いだろう。

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