2012年7月15日日曜日

W・チャン・キム&レネ・モボルニュ「ブルーオーシャン戦略」

W・チャン・キム (著), レネ・モボルニュ (著), 有賀 裕子 (翻訳)
「ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する Harvard business school press」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4270000708/>
単行本: 294 p ; 出版社: ランダムハウス講談社 ; ISBN: 4270000708 ; (2005/06/21)
[書評] ★★★★☆
 既存企業がひしめき合い、血みどろの戦いを繰り広げる「レッド・オーシャン」での戦いではなく、 既存企業が存在せず、したがって競争も存在しない、 新たな事業領域「ブルー・オーシャン」を開拓して、 事業を大きく成長させる方法について述べた本。 非常に興味深いことを述べているが、以下に挙げる3点の問題点がある。すなわち:
 ①競争の無い領域とは言っても、代替財(20世紀初頭における馬車と自動車のような関係の物)すら無い事業領域というものは滅多になく、 本書で述べている「ブルー・オーシャン」の商品・サービスの多くが、 別領域の別商品と競合関係にあり、そういう意味では真に「競争の無い世界」とは言えない。多くの企業は、このような自社製品と競合する別分野の製品/サービスには目もくれていないと述べるが、世の中でエクセレントなカンパニーと呼ばれている企業は大抵、そういった分野まで目を配り、必要な対策をとっている。そういう意味で、「競争の無い世界」というのは、どんなものかと。
 ②本書でもNTT DoCoMoのi-modeなどを挙げているが、i-modeは成功の美酒に酔いしれている間に他社の追い上げを受け、なかなか二の矢を継ぐことの出来なかった、ある意味「失敗例」としても有名である。 一発狙いならば、本書に書かれたようなアプローチで良いのだろう。しかし、企業を存続させる為には、二の矢、三の矢を継ぐ必要がある。 本書の論点からはずれるかも知れないが、 二の矢、三の矢を出し続け、継続的なイノベーションを起こす方法についても述べられていればより良かったのではないだろうか。
 ③既存の競合他社が存在しない領域は、 言い換えれば「今まで誰も振り向いてこなかった領域」でもあり、 当たれば大きいが(どうして今まで誰も気づかなかったんだろう)、 外れる時は大空振りに終わる(やっぱり誰も欲しがらない商品/サービスだった)、というリスクもある。このようなリスクに対する対策等については、 若干議論が甘い気がする。
 結論としては、世の中で騒がれているほど凄い本でも無い、という感じ。勿論、新規事業創出等に関する本をあまり読んでいない人が読むと、 当然のことながら、色々得るものは多いと思うし、また、よくまとまった書き方をされているので、多くの本を読んだ人が読んだ場合も、 様々なことが確認できて良いのではないだろうか。
また、本書の特徴である、社内外の抵抗者層への対処方法は、 企業の方針転換や制度の変更時など、様々なシーンで役に立つ方法だと思う。この辺りも色々と参考になって良い。

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