2012年7月8日日曜日

P.F.ドラッカー「創造する経営者」


P.F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)
「新訳 創造する経営者 ドラッカー選書」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478320748/>
単行本(ソフトカバー): 329 p ; 出版社: ダイヤモンド社 ; ISBN: 4478320748 ; (1995/03)
[書評] ★★★★☆
 成果に結びつくマネジメント、というテーマについて書かれた本。 非常に内容が濃い。 他の本もそうなのだが、ドラッカーの本は内容が濃すぎて、熟読するのは結構大変だと思う。だが、その苦労はきっと報われるはずだ。
 訳者あとがきにもこうある。 「特に本書は、ドラッカーが最初につけようとした書名が“ビジネス・ストラテジー”(「事業戦略」あるいは「企業戦略」)であったことからもうかがえるように、 企業に働く者や企業とかかわりをもつ者にとって、必読の書と言ってよい。 企業あるいは組織、さらにはそれらのマネジメントに対し、 多少なりとも関心をもつならば、ということは、現代社会というものに対し関心をもつならば、たとえ斜め読みでも、まずドラッカーを読んでおくことが必要であり、得であると思う。 数ある流行ものからは手に入れられない基本を知ることができる。」 本当にその通りだと思う。
 本書の邦題は「創造する経営者」となっているが、 原題“MANAGING FOR RESULTS”の方が内容をよく表していると思う。 企業活動を成果に結びつけるためのマネジメントについて、 順序だてて、かつコッテリと書いている。 最近のMBA・MOT的教科書のような整理された形での手法・ケーススタディは示されていないが、マネジメントという観点から必要なものが全て網羅されていると思う。 自社の事業環境や製品・サービスの分析手法など、非常に解り易く書かれていると思う。 今でこそコンサルティング会社や著名なコンサルタントから多数の教科書が売られているが、 本書の原著は1964年に出版されている。あらゆるテキストに先駆けた手本なのではないだろうか。
 1997年にハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセン(Clayton M. Christensen)が、その著書 The Innovator's Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail (邦訳: 玉田俊平太監修、伊豆原弓訳『イノベーションのジレンマ - 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』 翔泳社、増補改訂版 2001年)の中で「破壊的イノベーション」について初めて提唱したとされ、この考え方が一世を風靡したが、 本書でも、製品を置き換えてしまうイノベーションについて述べられている。すなわち(以下引用):
 「企業が売っていると考えているものを、顧客が買っていることは稀である。もちろんその第一の原因は、顧客は製品を買っているのではないということにある。 顧客は、満足を買っている。しかし、だれも、満足そのものを生産したり供給したりはできない。 満足を得るための手段をつくって、引き渡せるにすぎない。」
 「直接の競争相手とみなしている製品やサービスが、本当の競争相手であることは稀である。(…中略…) あらゆる製品とサービスが、突然、まったく異なった生産、流通、販売のされ方をしている他産業の製品やサービスと、競争関係に置かれる。まったく異なる機能や形態だが、しかし得られる満足は同じ種類のものであるという製品やサービスと、 激しい競争関係に置かれる。」
 クリステンセンが破壊的イノベーション論で似たことを述べる33年も前に、このようなことを述べているのである。ただならぬ先見の明である。

本書も、志ある人にとって、必読の書だと思う。

【追記】
上記の本は絶版となっているが、装丁を新たにした本が出ているので参考までに記しておく:
・ピーター・F・ドラッカー (著), 上田 惇生 (著)
 「創造する経営者 (ドラッカー名著集 6) [単行本]」
 <http://www.amazon.co.jp/dp/4478000565/>

0 件のコメント:

コメントを投稿