2012年7月14日土曜日

岩瀬大輔「ハーバードMBA留学記」

岩瀬 大輔 (著)
「ハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にて (単行本(ソフトカバー))」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822245527/>
単行本(ソフトカバー): 327ページ ; 出版社: 日経BP社 (2006/11/16) ; ASIN: 4822245527 ; サイズ (cm): 21 x 15
[書評] ★★★★☆
 本書の作者は東大法学部3年生在学中に司法試験(1次試験)に合格、コンサルティングファームに就職、2年後に転職、その後HBS(ハーバード・ビジネス・スクール)に留学(現在は保険会社の副社長)。この時、ブログを運営していたが、 留学終了後にブログの内容をまとめて本として出版したのが本書だ。 作者は親の仕事の都合で、小学校のときから渡米したりしている、いわゆる帰国子女枠に入るタイプ。 最初からものの見方がグローバルだ。 日本の企業ではなく外資系のファームにいきなり就職したこともあるし、その後約2000万円の自己資金を投資した留学ということで、 普通の日本企業に勤める社会人と比べると、多少トンガっている感は否めない。しかし、留学中の生活や活動について生々しい記述が多く、非常に刺激的だ。
 ただ、ものの見方がグローバルではあるが、 過度にアメリカナイズされた人とは毛色が違い、 日本人としての誇り、日本人としての物の見方がきちんとしており、 好感が持てる。
 「株主価値の最大化」に偏りすぎているアメリカの資本取引に疑問を持ち、 株主以外のステークホルダー(顧客はもとより、社員や取引業者、地域社会)を見なければいけないと理性面では分かっているようだが、しかし国内の一般社員10年生の視点から見ると、 最初から経営者層を狙った階層の人の考え方しかできておらず、 一般社員の「目」は持っていないように思える。…という点で★1つ減点。
 とは言え、この本は向上心の大切さを教えてくれるし、 自分も頑張ろうというファイトを分けてもらえる。 会社生活に刺激が欲しい向きにはオススメできる。
 また、日米のビジネス感覚の差こそあれ、ビジネスの基本は自分に正直であること、 「人として一番大事なのは何か」、 「他の物を捨ててでも自分が一番大切にしたい物は何か」、であるという点は、稲盛和夫氏の「アメーバ経営」とも通じるものがある。また、組織を運営していく上で重要なことは、アカウンティングやらビジネスプランやらのスキルも勿論大切だが、 人によって成り立っている「組織」というものを率いていく「リーダーシップ」が最も大切だということも教えてくれる。
 日本と異なり、会社経営に携わる者としては円熟味に足りない感は否定できないが(こればっかりは年齢を重ねないと身に付かないものなのだろう)、 管理職、経営にかかわる方々にも読んでみて欲しい1冊だ。

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